資生堂の元社長、池田守男・特別顧問が20日、腎臓がんのため死去した。76歳。池田特別顧問は、1961年に資生堂入社後、専務、副社長を経て、2001年から4年間(2期)社長を務めた。資生堂創業者の孫にあたる福原義春(社長在任87〜97年)、弦間明(同97〜2001年)を始め、5人の歴代社長を秘書や総務の責任者として支え、経営中枢を歩いてきたひとり。社長就任後は営業現場を重視する経営を推し進めた。
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主な経営改革戦略として、チェーン店のテコ入れ策を打ち出し、店頭基点の改革を実施。これは事業活動の全てを、顧客との接点である店頭を基点とした仕組みに切り替えるというもの。当時、チェーン店は全国に2万5000店ほどあったが、レジ一体型の販売時点情報管理(POS)端末を導入。他の業界ではすでに取り入れている競争原理に基づく区分だが、資生堂の歴史では画期的なことだったという。さらに、店頭基点改革の理念を組織に徹底するための会社運営の基本である「サーバントリーダーシップ」と称し、「ピラミッド型組織のもとトップダウンで実行するのではなく、お客さまを頂点に、次いで店頭でお客さまと接する販売第一線を、社長を始め、社員全員で支えていく逆ピラミッド型組織を構築すること」「社長の役割は会社のビジョンや理念を示すことだが、日常では現場の仕事が円滑に運営できるように支える存在でありたい」と提言し、それを実行に移していった。
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社長退任後は、会長や相談役として経営に携わり、今年4月から特別顧問に就任。他にも、資生堂美容技術専門学校 理事長、東京商工会議所 副会頭や旭化成、三越伊勢丹ホールディングス、ワコールホールディングスなどの社外取締役も務めた。また、若いころ、聖職者になりたいという「奉公と献身」という思いは、キリスト教系の東洋英和女学院の理事長・院長という形で果たされることになった。