毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月26日号からの抜粋です)
美濃島:毎年恒例のラン&フィットネス特集で、今回はランニング市場にフォーカスしました。コロナ禍でランニングをする人が世界的に増えて、アシックス(ASICS)などが過去最高の売上高を叩き出したりしましたが、実際の盛り上がりはどうなのか。小売り大手のアルペンやランニングレースプラットフォーム「ランネット」の運営会社などに取材しました。
林:実際にどうでした?
美濃島:やはり好調であり、層が厚くなったと感じました。消費者は健康意識が高まっていますし、メーカーもそれにあぐらをかかずに前のめりに商品開発をして興味を集めるほか、試し履きの機会やランイベント、5㎞くらいのミニレースなど、裾野を広げる努力もしています。昨年「ナイキ(NIKE)」は皇居の周りを走るランナーのためのハブになる店を銀座に作りました。「ホカ(HOKA)」は原宿のど真ん中に新店を構え、2階はイベントやランナーの交流の場になります。この盛り上がりは、まだまだ続きそうです。
林:いものが売れていますよね。かつて走り始めようと思ったら1万円くらいのランニングシューズが主流だったけれど、今は初級者も1万5000円くらい。「ナイキ」の厚底シューズが火付け役になって高機能になっているし、機能の進化も手伝ってフルマラソンの世界記録は不可能と言われてきた2時間切りが目前です。一般の人にも、いい靴に手を伸ばす動きが広がっています。
ランニングもカルチャーになってきた
美濃島:3年くらい取材してきて、僕もハイエンドなパフォーマンスシューズを取り上げがちでしたが、やはり週に1回、数㎞走る人や、ファッションとして楽しむ人など、多様なユーザーがいるからこそ、市場が拡大します。スニーカー専門店「アトモス(ATMOS)」出身者が、自分らしさを表現できるランニング専門店を新宿に開き、ほしいウエアを自分たちで作るブランドも増えています。英国のランニングカルチャー誌「ライク ザ ウィンド」の日本版も発刊されるなど、さまざな立場から、インディペンデントに商いをする人が増えて、ランの魅力が広がっています。
林:ランニングもカルチャーになってきたよね。昔は自己記録を出すというストイックな人が多かったですが、今はアプリを使って情報共有やSNS投稿もできるし、店やブランドも細分化され、コミュニティーができています。ますます面白くなりそうです。