フランス・パリで1月20〜23日に開催された「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」には、世界から約260ブランドが出展した。うち約3割がフランスのブランドで7割がそれ以外。初出展ブランドは3割だった。
会場で最も大きなスペースを確保したのはワコール ヨーロッパ、シャンテルグループ、シモーヌ ペレール、ハンロだ。各社、歴史の中で培われた高い技術を誇る専業メーカーであることをアピールする新作を発表した。
ワコール ヨーロッパは、シェイプウエアの新シリーズ“シェイプ レボルーション アワーグラス“を発表した。その名の通り砂時計のようなボディシルエットを叶えるアイテムで、腹部を押さえる目的でボンディング(接着)パネルを裏打ちし、ずれ防止のためウエストには医療用のシリコンテープが施されている。市場では、アウターに響きにくいシームレスで快適なシェイプウエアの需要が高まっており、それを反映した新作だ。
シャンテルグループは24年秋に新ブランド「シャンテル パルプ(CHANTELLE PULP)」をローンチする。遊び心のあるカラーとデザインが特徴で、140年以上続くメーカー独自の機能性を備えたブランドで、ブラジャーサイズはアンダー65から100、AからHカップを展開する。
75周年を迎えたシモーヌ ペレールは、創業時から現在までのアーカイブを展示した。新作はゴールデンエイジをテーマに、1940年代の女優にインスパイアされたエレガントなムードにまとめた。
ハンロは今年、創業140周年。パリジャンナイトをテーマにした記念コレクションを発表した。24年秋冬のトレンドカラーであるネイビーとディープグリーンを軸に、上質な素材のラウンジウエアと肌着をラインアップ。
他、フランス発「オーバドゥ(AUBADE)」は、ブランドらしい“セダクション(誘惑)”がテーマのセクシーなランジェリーを多様なデザインでそろえた。24年秋冬の注目は、モデルのシンディ・ブルーナとのコラボで、グラフィカルな刺しゅうを施したランジェリーとナイトウエアを発売する。
中国らしさをモダンに表現する、新世代デザイナーが台頭
新興ブランドは欧州勢が大半を占めるものの、中国、香港、日本などのアジア勢の存在感が高まっている。特に、若手デザイナーによる中国ブランドは創造性に優れ、欧州ブランドに見劣りしないレベルだ。これはコロナ禍前には見られなかった傾向だ。
中国・上海が拠点の「ハーセンス(HER SENSES)」は、フランスと中国の下着業界でキャリアを積んだ2人の女性が19年にスタート。バウハウスに影響を受けた構築的なカッティングが特徴で、成都に直営店があり、台湾やバルセロナにも卸先を持つブランドだ。
同じく上海発の「スティル アドア(STILL ADORE)」は、自然界の色やモチーフを着想源にしたデザインで、ストレッチレースと幅広ゴムを組み合わせたフェミニン&スポーティーのミックススタイルで、消費者と同じエネルギーを持つ新しいチャイニーズスタイルを提案している。中心価格帯はブラジャーが、7500〜9800円、ショーツが3000円程度と、欧州ブランドに比べると値頃感がある。
23年にデビューしたばかりにも関わらず、ヨーロッパにも販路を広げている「ルーナマイン(LUUNA MINE)」。中国でラッキーモチーフとされる月や、上海の街並をグラフィカルに描いた柄など、中国ブランドとしてのアイデンティティーをモダンに表現。このように中国らしさを積極的に打ち出すクリエイションを、“チャイニーズルネッサンス”と呼ぶようだ。
中国経済の減退により、国内から海外への販路を広げようと挑む中国ブランド。欧州ブランドより手頃な価格と個性的なクリエイションを武器に、日本市場に浸透する日も近いかもしれない。