イタリア・ミラノで1928年に誕生した高級レザーブランド「セラピアン(SERAPIAN)」。柔らかなラムのナッパレザーを、イタリアの職人たちが丁寧に編み込んだデザイン“モザイコ”は、ミラネーゼの洗練された美学を感じさせる。2017年に「カルティエ(CARTIER)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモングループ傘下に入り、特に女性客からの支持を伸ばしている。6月には東京・銀座に新たな旗艦店のオープンを控え、日本市場にも力を入れる。マキシム・ボヘ(Maxime Bohe)最高経営責任者(CEO)にミラノの本社ヴィラ・モーツァルトで話を聞いた。
“ミラネーゼの手”が生み出すバッグ
洗練された美学を持つ
女性たちから支持
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「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):リシュモングループに参入以降、ウィメンズカテゴリーを強化している。
マキシム・ボヘCEO(以下、ボヘCEO):ここ数年で、ウィメンズは2ケタ増のペースで伸びている。「セラピアン」は創業当時からスカラ座でオペラを鑑賞したりモンテ・ナポレオーネ通りへ買い物に出かけたりするときにユニークなバッグを持ち歩きたいという淑女たちの欲求をかなえてきた。今あらためてウィメンズが急速に伸びているのは、高い職人技術と実用性、“クワイエット・ラグジュアリー”のトレンドの中でも際立つクリエイションといった、現代の女性たちが求めるものを提案できているからだろう。昨年はニューヨーク、直近はアブダビにも出店し、戦略的に販路も広げている。次は東京の旗艦店だ。銀座という東京の中心でミラノの本社ヴィラ・モーツァルトの雰囲気を再現するつもりだ。
「WWD」:現在の「セラピアン」ウーマンとはどんな人たち?
ボヘCEO:さまざまなラグジュアリーブランドを楽しんできたが、今もう一度ユニークで貴重なものを持ちたいと思っている女性たち。顧客は建築家やアートコレクターら総じて自分のテイストが明確で洗練されたものの美学を理解している人たち。同時に彼女たちは、「セラピアン」を通してそうした美学を共有するコミュニティーに属していることにも誇りを持っている。
「WWD」:あらためて「セラピアン」の強みは?
ボヘCEO:私たちが“ミラネーゼの手”と呼んでいる職人技だ。今でも全ての製品をイタリアで生産しているのは、柔らかで軽量な製品を作ることができる“ミラネーゼの手”があってこそ。現在は25人の職人がいる。15年以上の経歴を持つマスター職人の女性は創業者の妻のジーナ・セラピアン(Gina Serapian)から直接指導を受け、そのノウハウを今若い世代に教えている。本に書かれたマニュアルではなく創業者から受け継いだ技をマスター職人たちが丁寧に伝え続けている点は強みだろう。しかし生産ペースを維持しながら規模を拡大するには、どうしても職人が足りない。今後は職人たちがお客さまと直接コミュニケーションを取ったり、ときには一緒にデザインを考えたりする機会を増やして職人自身が若い世代にインスピレーションを与えることが重要だと考えている。
銀座店では真のミラネーゼ体験を届ける
「WWD」:銀座の新たな旗艦店はどんな店になる?
ボヘCEO:真のミラネーゼ体験を届けたい。それが私たちに求められていることだからだ。店の外壁には、ミラノの建築によく使われるマリア・テレジア・イエローと呼ばれる柔らかなイエローを採用した。ミラノの街を歩くと本当によく見かけるミラネーゼがとても好きな色。ヴィラ・モーツァルトと同様のデザインのエントランス、大理石の床、イタリアの職人が手掛けた壁など、至る所でミラノを感じてもらえるはずだ。
「WWD」:「セラピアン」はビスポークサービスも強みだ。
ボヘCEO:ミラノのアトリエでの体験を再現するべく、イタリアで訓練を積んだ職人が店内に在中する予定だ。全てのお客さまに“モザイコ”ができる過程を見てもらい、美しさを理解してもらいたい。
WWD:特に日本の女性に向けてはどんな製品でアピールしていく?
ボヘCEO:今の時代は特にオーセンティックなブランドが求められている。私たちの製品は、時代や文化を超えて求められる要素を最初から備えている。例えば1970年代に誕生した“シークレット”バッグは今でも人気だ。幸いなことに、ミラノの女性と東京の女性は好みやライフスタイルにおいて多くの共通点がある。洗練されていてエレガントなものを好む傾向があるし、どちらも大都市を舞台にアクティブに過ごしている。「セラピアン」の製品は着替える時間がなくても朝からイブニングのパーティーシーンまで持てる。電車での移動時にも使いやすく現代生活にもきちんとマッチする。メゾンのDNAを一貫した製品で表現し、真のミラネーゼとしてのアイデンティティーを届けることに注力していきたい。
“シークレットガーデン”を
イメージした会場で
新作コレクション発表
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ミラノ・ファッション・ウイーク中には、本社兼アトリエのヴィラ・モーツァルトで2024-25年秋冬コレクションのプレゼンテーションを行った。会場にはプラントアーティストの川本諭がイタリアと日本の植物を使ったインスタレーションをしつらえ、シーズンテーマである“シークレットガーデン”を演出した。
旅行が大好きでアクティブだという創業者の息子の妻の名アニ・セラピアン(Ani Serapian)にちなんで名付けた新作“アニ”バッグは、メゾンのアーカイブ“バウレット・トラベルバッグ”を日常的に使えるミニサイズでアップデートしたもの。さまざまな定番製品からは、自然から着想を得た美しいトーンの変化が特徴的なグラデーションのデザインの"キアロスクーロ"のほか、スエードやエキゾチックスキン、イタリアンウールなどを組み合わせて表情に絶妙な変化をつけた新たな“モザイコ”デザインなどが登場した。
日本の老舗着物ブランド
「千總」 とコラボ
24-25年秋冬コレクションのもう1つの目玉は、日本の老舗着物ブランド「千總」 とのコラボレーションアイテムだ。「イタリアと日本に咲く架空の花」をイメージした幻想的な花のデザインを元にしたカラーパレットや、バッグのライニングやシルクスカーフにも施した。同アイテムは、銀座旗艦店で発売予定だ。
リシュモン ジャパン
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