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連載 ビューティ・リサーチャーズ 第5回

「肌悩みに寄り添いたい」 ロート製薬の基礎研究分野を開拓【ビューティ・リサーチャーズ Vol.5】 

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PROFILE: 原田綾子/ロート製薬 外用薬開発グループマネージャー

原田綾子/ロート製薬 外用薬開発グループマネージャー<br />
PROFILE: (はらだ・あやこ)東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程を修了し、新卒でロート製薬入社。スキンケアの基礎を探索する新設部署を経て06年スキンケアの基礎研究部門へ。大学、クリニックとの共同研究に携わる。10年から再びスキンケアの製品開発部門で「エピステーム」「肌ラボ」「ケアセラ」などを担当。19年からは皮膚用薬の開発部門で、毛髪研究や鎮痒消炎薬などの領域を担い、21年から現職。女性用皮膚用薬(フェムケア)に注力 PHOTO:SHUHEI SHINE

新商品や新成分はビューティ企業の競争力の源泉であり、研究員の努力の結晶だ。本連載では、普段表舞台に出てくることが少ない研究員たちの仕事内容や醍醐味を聞く。ロート製薬の原田綾子外用薬開発グループマネージャーは、2000年代にスタートした同社の基礎研究部門の初期メンバーとして、後に続く下地を作ったパイオニアだ。以来20年以上、基礎研究や化粧品、医薬品開発などにわたり、同社の研究現場の第一線を走ってきた。(この記事は「WWDJAPAN」2月26日号からの抜粋です)

辞令に(仮称)
がむしゃらの新米時代

WWD:ロート製薬を選んだ理由は。

原田綾子・外用薬開発グループマネージャー(以下、原田):私が幼いころの冬の風物詩は、皮膚科医院。アトピー性皮膚炎で痒くなった肌をかきむしり、年頃になると、色素沈着してしまった肌の部位に美白化粧水を塗っていた。大学では、有機化学の実験や不規則な研究室生活で肌荒れが再度どんどんひどくなるばかり。「私のように、肌が弱い人に寄り添う商品を作りたい」という発想が自然と生まれた。

WWD:入社当時を振り返ると。

原田:私が入社した02年は、当社がちょうどスキンケアの基礎研究に緒をつけ始めたころ。私が所属したのは産声を上げたばかりの基礎研究チーム。配属当時の辞令に「(仮称)」とあって、あっけに取られたのを覚えている(笑)。研究領域は手探りながら、ビタミンCを効率的に経皮吸収(肌にスキンケアなどの成分を浸透させる)させる仕組みなどを試行錯誤した。

WWD:基礎研究が軌道に乗るまでの苦労は。

原田:最初は4人の少人数チームで、その中でもよちよち歩きの私。研究所の先輩の力を借りながら、ひたすら仮説と検証を繰り返す毎日が4年ほど続いた。大学の研究者と取り組む機会にも恵まれたが、研究に必要な知識も考察力も足らず、今振り返れば恥ずかしいことだらけ。ただ、若い頃から自分のスキルを大きく超えた仕事に挑戦し、多方面のプロと仕事ができたことは財産になった。今も生きている知識や知見は数えきれないほどだが、一番は“チームワークの力”を体感できたことだ。

WWD:研究室におけるチームワークとは。

原田:基礎研究は「ゼロから1」を生み出すためにじっくりと腰を据えて打ち込むためのもの。でも化粧品はそれだけで形になるわけではない。出てきた“1”をどう社会実装するかまで考えなければ、研究の意味がないし、自己満足で終わってしまう。多少の経験不足はあれど、やりたいことを言語化し、周りを巻き込みながらプロジェクトを進める推進力が必要だ。

そのころの基礎研究チームから生まれた「ディーナ」というブランドがあった(現在は終売)。当時としては画期的な「幹細胞」のメカニズムを応用し、基礎研究の合間をぬって商品を作った。コンセプトが時期尚早すぎた感もあったが、さまざまな部署の仲間たちとともに、「届けたい」という情熱を形にする貴重な経験だった。

WWD:10年に製品開発部門へ。

原田:スキンケアブランド「肌ラボ」の大型リニューアル(16年)につながる開発や、乾燥肌に悩む人に向けたボディーケアシリーズ「ケアセラ」、当社最高峰エイジングケアシリーズの「エピステーム」などに携わった。医薬品メーカーの知見、蓄積は当社の他にない強み。その思想やノウハウを化粧品にも応用すれば、さまざまな形で人の悩みに寄り添えるという手応えを得られた。

WWD:21年から皮膚用薬の開発部門でマネージャーに。

原田:最初は、研修で課題図書だったチームビルディングの本をひたすら読み、頭でっかちに考えていた。だがしばらくすると、組織も生き物のようなものであり、常に変化し続ける“安定しない状態”をいったん受け入れようと考えるようになった。チームマネジメントも、一つ一つの試みを“実験”のように楽しんでいる。年齢や立場に関係なくメンバーと向き合っていきたい。

WWD:メンバーにはどんなアドバイスを。

原田:私がこれまでのキャリアで基礎研究、製品開発の双方に携われたことは、とても幸運だった。基礎研究の実験では、仮説に反した結果が出てきたときにも、そのデータを解釈・考察する時間的余裕がある程度ある。だが製品開発に携わっていると、商品発売はカレンダー上のタイムリミットがあり、なかなかそうはいかないものだ。そんなとき、基礎研究の感覚を思い出すようにしている。自分の考えに「余白」を持てるかどうかで、商品の面白さやクオリティーが変わる。思考のフレームを常に柔らかく持ち、研究に向かってもらいたい。

また、当社は食や再生医療など、アメーバのように事業領域が拡大している。ジョブローテーションによる部門間の人事交流も活発。さまざまな可能性に挑戦できる環境だ。私自身はというと、実験で自ら手を動かす場面は少なくなったが、世の中で悩む人に寄り添いたいという思いは消えていない。特に力を入れたいのはフェムケア。医薬品ブランド「フレディ」は昨年、商品ラインアップを拡充した。デリケート部位のかゆみ、かぶれや膣カンジタといった悩みに寄り添う当社ならではの商品をそろえ、女性の健やかな人生を応援したい。

基礎研究を下地に
ヒット商品を生み出す

原田さんは、スキンケアブランド「肌ラボ」の大型リニューアル(16年)につながる開発や、乾燥肌に悩む人に向けたボディーケアシリーズ「ケアセラ」、最高峰エイジングケアシリーズの「エピステーム」などにも携わった。原田さんの開拓した基礎研究が製品開発の下地になっている。

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