ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション&ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすく解説します。今回は凄まじいスピードで進化する「中国発 生成AIを使ったECの最新事情」。一体何が起こっているのか?
「日本が不便なんで、びっくりした」。最近、中国から帰国した友人のぼやきだ。買い物、鉄道やタクシーの予約、公共料金の支払いなど日常のほとんどがスマートフォンをいじれば解決できる中国と比べると、日本は何かとおっくうなのだとか。こうした便利さは熾(し)烈な競争の結果、作り上げられたもの。中でも中国のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を支えるITの巨人アリババグループの貢献は大きい。1999年創業の同社は中小零細企業でも手軽に店が開け、それと同時にニセモノや詐欺が横行するネット通販でもそれなりに安心して買い物ができる仕組みを構築したことで、トップ企業となった。
世界3位の「アリババクラウド」、アジア圏でシェアを猛烈に拡大中
中小零細企業支援という、草の根の泥くさい世界からスタートしたアリババだが、2009年には第二の事業の柱としてアリババクラウドを設立し、クラウドコンピューティングの世界に本格進出した。毎年11月11日に開催される、世界最大のネットセール「独身の日」には消費者のアクセスや決済が集中する。奔流のようなアクセスに耐える能力、決済に求められるセキュリティー、顧客インサイトの分析とリコメンドなど、ECで鍛え上げられたアリババは、中国クラウド市場(IaaS)のシェアでは18年から圧倒的なトップを、世界でも米グーグルを上回る3位につけている。
アリババクラウドは2009年、アリババグループの一部門として設立された。世界最大のネットセール「ダブルイレブン」の大量注文に耐える能力は高く評価され、18年以降は世界IaaS市場でアマゾン、マイクロソフトに次ぐ売上高世界3位。アリババの研究機関DAMOアカデミーが開発した画像処理やAI、IoTなどの技術を用いて、ネットショップや物流、金融などEC関連のソリューションに強みを持つ。五輪オフィシャルパートナーとして競技映像の世界配信をサポートするなど、世界の200以上の国・地域で事業展開。日本にも3カ所のデータセンターを擁している。
すでに実装!誰でも使用可能、生成AIで1枚の写真から「盛れる100面相」
アリババは、クラウドサービスプロバイダーとしての基礎体力を持ちつつ、本業に必要な技術を外販しており、リテールを中心としてユニークなソリューションが多い。さかのぼれば、宣伝バナー自動作成機能、商品画像検索や一括修正、サプライチェーン金融、スマート物流などもあるが、ここ最近で注目したいのは、AR(拡張現実)を使った口紅や衣料品の試着機能、デジタルヒューマンを使った商品画像作成のバーチャルモデル機能など、生成AIを使ったものだ。
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