PROFILE: 小林千晃/アダストリア執行役員ビジネスプロデュース本部長
アダストリアは2月15日、総合スーパー(GMS)のイトーヨーカドー(以下、ヨーカドー)の衣料品平場への商品卸を開始した。ヨーカドーは2023年3月に自前でのアパレル事業からの撤退を発表しており、新売り場「ファウンドグッド(FOUND GOOD)」がその大部分を受け継いだ形。アダストリアは商品だけでなくVMDや販促、接客ノウハウもパッケージでヨーカ堂に提供し、ヨーカドーは6月までに首都圏を中心とした64店に同売り場を広げる予定という。23年に創業70周年を迎えたアダストリアは、「アパレル小売業からプラットフォーマーへ」を掛け声に、アパレルを軸に業界内外に多様なソリューションやノウハウを提供する企業へと変革を目指している。今回のヨーカドーとの協業もその一環だ。
前提として、ヨーカドーは1990年代以降、「ユニクロ(UNIQLO)」「ファッションセンターしまむら」などのカテゴリーキラーが成長する中で、衣料品のパイを奪われ続けてきた。2005年に伊勢丹出身の故・藤巻幸夫氏を衣料品立て直しのために迎え入れたのをはじめ、直近でも22年秋に宝島社の雑誌編集部と組んだ商品や売り場開発を行うなど、模索を続けていた。アダストリアはショッピングセンターやファッションビル向けブランドが主力であり、GMSの商売に強い企業ではない。ただ、「GMSといえど売っているのが衣料品ならば、われわれとして何かお手伝いできるのではないかと長らく考えていた」と、アダストリアの小林千晃執行役員ビジネスプロデュース本部長は話す。
アダストリアでは、BtoB事業を手掛けるビジネスプロデュース本部が今回の協業を主導している。同部は昨年9月に発足し、それまでR&D本部として手掛けていたBtoB事業を引き継ぎ、企業や団体のユニホームやグッズ製作、他社のブランド開発支援などを行ってきた。ヨーカドーとは1年以上前に話し合いを開始。「ヨーカドーの主要64店舗の衣料品平場の売り場環境を全店見て回り、お客さまへのアンケートも実施した。ヨーカドーの強みである食品とファッションをつなげるためには、アダストリアが得意とする30〜40代向けのカジュアルウエアや生活雑貨が必要だと提案した」。
その言葉通り、「ファウンドグッド」では約330〜990平方メートルの売り場でウィメンズ、メンズ、キッズのカジュアルウエアやシューズ、バッグ、ピアスなどのアクセサリー、キッチンツール、デジタルガジェットなどを扱っている。メンズのジャケパンスタイルやウィメンズのセットアップなどはあっても、本格的なスーツやオケージョンウエア、肌着は扱わない。「ファウンドグッド」のモデル店舗の1つであるヨーカドー木場店では、「ファウンドグッド」に隣接する形でメンズトラッドの「ケント」やウィメンズオケージョンの「ギャローリア」のコーナーがあるが、それらは以前からヨーカドーに商品供給しているメーカーによるものだ。
「コンサルのように口だけ出す、ではない」
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