毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月4日号からの抜粋です)
大塚:メンズ・コレクション特集の第2弾は毎回トレンド切りです。これまでは新しさ重視でしたが、2024 -25年秋冬はリアリティーに寄せたスタイル、アイテム、アクセサリーを集めました。
藪野:僕はコロナ禍に1回パリでメンズコレを取材しましたが、ミラノ・パリ両方を取材するのは初めて。今季はデザイナーたちが現代のマスキュリニティーをどう解釈しているのかがポイントでした。もともとウィメンズと比べてメンズは制約が多い印象ですが、最近は男女のスタイルがリンクするブランドも多く、トレンドもジェンダーを超えて波及していくように感じました。
大塚:今回の僕らの推しは、“グランパコア”です。レトロなムードがありつつ、ただ野暮ったいだけでなく、今っぽく見せるスタイル。「ロエベ(LOEWE)」や「フェンディ(FENDI)」など多くのブランドで出ていました。
藪野:定義するなら、レトロでリラックス感が漂いつつ、品もあってだらしなくない “おじいちゃんの着古した服を借りてきた”ようなスタイルです。今、若い世代にビンテージが人気ですが、タック入りの太いパンツや、チェックやツイードのジャケット、アーガイルなどの伝統的な柄やケーブル編みのニットといったアイテムは、彼らにとって新鮮なのかも。着こなし自体はSNSやストリートから火がついた印象ですが、ランウエイにも登場し、マーケット全体に影響を与えるトレンドに発展するんじゃないかと期待しています。
「ルイ・ヴィトン」のコラボで確信
大塚:比較的中堅以上のミラノ&パリブランドに多く出てきたスタイルだったのですが、フィレンツェで取材したピッティでも、注目の新鋭「マリアーノ(MAGLIANO)」や「エス・エス・デイリー(S.S. DALEY)」が“グランパコア”を出していたので、腑に落ちました。
藪野:ゆったりとしたサイズ感や普遍的なアイテムのアレンジといった近年のトレンド傾向の延長線上にあるので、男女を問わず自然に取り入れやすそうです。“グランパコア”のお手本といえば、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)。つい先日「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」メンズのファレル(・ウィリアムス)とのコラボも発表されましたし、彼自身の着こなしにもさらに注目が集まるはず。「これはトレンドになる!」と確信しました。
大塚:古着店でも買えますし、僕もメンズ発でウィメンズにも波及するビッグトレンドになる可能性を感じています。盛り上げましょう!