アルビオンの2023年12月期決算は、販管費の抑制が奏功し、売上高が前期比3.7%増の542億円、営業利益が同15%増の39億円、純利益が同6.4%増の30億円だった。
小林章一アルビオン社長は、「20年度は創業以来16億円の営業赤字となり、23年前半まで体質改善に取り組んできた。広告費や販売促進費を大幅に縮小したほか、美容部員や熊谷工場における採用を見直すなど苦しい時期を過ごしてきた」と振り返る。現在も厳しい状況は続いており、「残念ながら外国人バイヤーによる『エレガンス』“ラ プードル”の売り上げを除くと年間で数億円の赤字になる状況だ。利益向上に向け今後しっかりと将来の検討、可能性を考えていきたい」と話す。
部門別では営業本部(国内)の売上高が同8.3%増だった。チャネル別は専門店が2.2%増、百貨店が17.9%増だった。ブランド別では「アルビオン(ALBION)」の売上高が同1.5%減、「イグニス(IGNIS)」が同7.1%増、「エレガンス(ELEGANCE)」が同30.1%増だった。カテゴリー別では、全体の構成比が半数以上を占めるスキンケアの売上高は同3.9%減、ベースメイクは同30%増、ポイントメイクは同9.9%増だった。ベースメイクカテゴリーは、コロナ禍前の19年比50%増で着地し、過去最高の売り上げを更新した。
国際事業部の売上高は同10.4%減だった。ブランド別の売上高は「アナ スイ コスメティックス(ANNA SUI COSMETICS)」が同32.5%増、「ポール & ジョー ボーテ(PAUL&JOE BEAUTE)」が同16.8%減、「アルビオン」と「エレガンス」合わせて同9.2%減だった。
「アナ スイ コスメティックス」は、“リング ルージュ”や“ローズ プレスト パウダー”などの新商品が寄与した。小林勇介・専務 国際事業本部 本部長は「数年前に百貨店を整理し、昨年はウェブとブティックを中心に販売したがオペレーションにも慣れた。しかし、『アナ スイ』はまだまだ市場で盛り上がるべきブランド。知名度は高いが悪く言えば目新しさがなく、新しいお客さまとの出会いが少なくなってきている」と、今年は新たな客をターゲットにファッションのセカンドライン「アナスイ エヌワイシー(ANNA SUI NYC)」と同様のネーミングのメイクパレットを10月に発売する予定。「これまでの世界観とは少しイメージを変え、より若いお客さまをターゲットにした商品を今後も販売していきたい」。並行して既存色は全て見直し、商品数も絞る計画だ。
「ポール & ジョー ボーテ」は、化粧下地の競争激化が響き、これまで実績を押し上げてきた化粧下地“ファンデーション プライマー”が苦戦した。「プライマーはこれからも主力商品であるが、改めてプライマーの魅力について見直すことができた。個性をもっと生かしながら、積極的に新商品の計画やプロモーションを実施していく」と、9月に“モイスチュアライジング ファンデーション プライマー”のリニューアル発売を予定する。「『ポール & ジョー ボーテ』は決して“かわいい”だけのブランドではない。幅広い層のお客さまに向けて商品の魅力を丁寧にアピールしながら、ブランド全体を盛り上げていきたい」と述べる。
「アルビオン」は、日本国内免税店が20億円の売り上げ規模まで伸びたものの、中国市場や韓国市場の落ち込みをカバーするまでには至らなかった。「これから大切なのは各市場で『アルビオン』の知名度を高めることだ。国によって百貨店や直営店の出店も検討する。今年は韓国、香港、台湾、東南アジアなどをまわり、現地の人たちと一緒に戦略を考えていきたい」と話す。年内には「アルビオン」のグローバル商品をデビューさせる方針。なお、「アルビオン」を代表する化粧水“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル(以下、スキコン)”は今年、誕生50周年を迎える。1年を通じて国内でイベント施策や限定キットなどアニバーサリー企画を用意し、タッチポイントを拡大しながら周年を盛り上げていく。
小林社長は「高級化粧品の商品開発は、過去の成功を忘れる、過去の成功を“壊す”ことが大切ではないかと思う。過去の成功に酔うことなく、今までの市場にないもの、業界の常識ではできないと思っていたものを作れるように挑戦を続けていきたい。生意気な言い方にはなるが、他の会社の皆さまがマネをしたくなるようなモノづくりをしていきたい」と力強く語った。