2024-25年秋冬パリ・ファッション・ウイークの現地リポートを担当するのは、コレクション取材20年超のベテラン向千鶴・編集統括兼サステナビリティ・ディレクターと、ドイツ在住でヨーロッパのファッション事情にも詳しい藪野淳・欧州通信員。朝から晩までパリの街を駆け巡り、新作解説からユニークな演出、セレブに沸く現場の臨場感までを総力でリポートします。今回は、「ラバンヌ(RABANNE)」や「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」のショーから、「LVMHプライズ(LVMH PRIZE)」や「ブシュロン(BOUCHERON)」「ヴェジャ(VEJA)」のイベントまでをお届け!
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16:30「ラバンヌ」
ここ数シーズン、きらびやかなイブニングルックにかなり傾倒していた「ラバンヌ」ですが、今季は一転。“ウエアラブル・ラグジュアリー”をテーマにしたレイヤードスタイルを見せました。ビンテージショップもしくは両親や祖父母のクローゼットで見つけたようなオーバーサイズのテーラードジャケットやレザーブルゾン、カーディガン、クラシックなチェックや懐かしい花柄をのせたアイテムなどのレイヤードで生み出すルックは、今週発売のWWDJAPANメンズトレンド号でも取り上げた“グランパコア”に通じるムード。女性が“グランパコア”を取り入れるなら、「これがお手本!」と感じるようなスタイリングです。「ラバンヌ」を象徴するメタルを使ったピースも、ミックス&マッチの着こなしの一部に取り入れることで、説得力がグッとアップ。日常にスペシャル感を加えたようなスタイリングは、素敵だけど着るシーンがかなり限定される最近の提案よりも好感が持てます。
ショー後は、クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)に話を聞きたくて、バックステージへ。方向性の変化について尋ねると、「この数シーズンはブランドが持つクラフトの可能性を探求し続けてきた。でも今の複雑な世界の状況などを考えると、自分の身の回りにいる人々というリアリティーのあるスケールに戻るべきだと思った」そう。だから、今季は街や地下鉄の中にいる女性を観察するところからコレクション制作をスタート。「トレンチコートの上に大きなスカーフを巻いてジーンズやスニーカーを合わせたり、雨が降ってきたらセーターを頭の上にのせたりという着る人と服の親密な関係や、そこから生まれるアティチュードやジェスチャーをとても美しくポエティックだと感じた。そんな着こなしは非の打ちどころがないほど洗練されているものでも、見せびらかすためのものでもなく、その人らしさやライブ感がある。ランウエイはストリートとは異なるけれど、現実味があるものにしたかった」と説明します。そして、ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック(The Sound of Music)」の一曲「私のお気に入り(My Favorite Things)」を例に挙げ、童心に帰ったような気持ちで自分の好きなものを掘り下げたといいます。
18:00 「LVMHプライズ」セミファイナリスト プレゼンテーション
2024年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリスト20組が一堂に揃うプレゼンテーションの会場は、夢と野心、新しい才能への期待がギュギュッと詰まり大混雑。18カ国から集まったデザイナーたちは、プレゼン慣れしており、話しかけると1分で自分のブランドの魅力とこれからの夢を語ってくれるから取材が進みます。さながらファッション界の「It’s a small world」で楽しい。
日本からは「コッキ(KHOKI)」がノミネートされました。デザインチームでの活動を大切にしている故、誰か一人の名前を立てずに活動しています。今回はコミュニケーションを円滑にするためにアベ・コウキさんをデザイナーとして立てつつ、詳しいプロフィールは引き続き非公開。オフィシャル写真も黒髪で顔を隠すという貞子もびっくりの方法で登場です。アベさんをはじめ、チームメンバーが好きなもので装飾した服、集めたコーディネートなど、服そのものにメンバーの個性が濃い目に詰まりつつ絶妙なバランスを保っているという、新しいアプローチのカジュアルウエアです。
昨年のグランプリ受賞者である「セッチュウ(SETCHU)」の桑田悟史デザイナーは受賞のメリットについて、賞金はもちろんのこと、LVMHチームによる1年間のメンターシップが大きいと語っていました。それはクリエイションとビジネスの両面でデザイナーの成長を促す、まるでファッションデザイン版MBAの如く濃厚な時間なようです。その権利を今年は誰が手にするのでしょうか?
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