アクセサリーブランド「クリティカルラボ(CRITICAL:LAB)」の森りこデザイナーは、同ブランドを「コブルドゥ(COBBLE DU)」に刷新し、2024-25年秋冬シーズンにアパレルを始動する。「クリティカルラボ」で定番だったアクセサリーも継続する。
ブランド名の“cobble”はスウェーデン語で“丸石”を表し、“du”はフランス語の前置詞で、英語の“some”にあたる。ブランド名を直訳すれば“石畳”だ。古い時代から現代まで残る石畳のように、自分たちのクリエイションを後世に残すこと、そして自分たちの“意志”を残すことの2つの意味を込めた。「クリティカルラボ」と同じ“C”の頭文字を受け継ぎ、「決められた尺度ではなく、自分で価値を判断して、本当にいいと思うものを作る」という前ブランドからの姿勢を貫く。
新ブランドは、要素を削ぎ落としたミニマルなスタイルを軸に、直線を強調したパターンワークやコンパクトなサイジングで、緊張感を漂わせたクリエイションを押し出す。ファーストシーズンはウエア10型、アクセサリー8型、バッグ1型の全19型。価格帯はアウター10万5600〜10万7800円、ジャケット7万9200円、ボトムス4万9500〜7万7000円、シャツ3万5200円、トップス2万9700〜6万2260円、アクセサリー2万4200〜6万6000円だ。
アイテムの多くは、森デザイナーが“日常的に心引かれるもの”にインスピレーションを得た。例えばテーラードジャケットは、アーティストのフィリップ・スタルク(Philip Sterk)による、壁に照明がめり込んだ作品に着想し、襟と胸ポケットを身頃に埋め込んだ独自の設計にした。身頃には薄い中綿を、肩には30mmのパッドを入れて、立体的なシルエットを生んだ。ほかにも、東京都庭園美術館内のタイルやじゅうたんの留め具に着想し、フロントに複数のスリットを入れたハーフパンツや、森デザイナーの愛犬の毛を再現したグレーモヘアのダッフルコートなどを用意した。
アクセサリー制作で探求したユニークな構造は、ウエアにも反映している。裾が20cm以上たまるスーパーロング丈のスラックスは、ウエストと身頃にスリットを入れており、ベーシックに裾まで足を通すはき方のほかにも、身頃の途中から足を出したり、ウエストにのみ胴体を入れたりして着用できる。「残った部分はそのままに垂らすのもいいし、足に巻き付けても個性的なスタイリングになる」と森デザイナー。さらには、プリーツスカートに複数のシャツの袖をドッキングさせたボトムスなど、ユニークなアイテムもある。袖口に中指用のフィンガーホールが入ったニットトップスは、著名人がパパラッチに中指を立てるシーンに共感したもので、「攻撃的だけれど、自分を守るためのポーズでもある。その二面性をデザインに込めた」という。
「クリティカルラボ」では直営ECを軸にビジネスを拡大した。しかし「コブルドゥ」ではECを開設せず、販路は卸売りを軸にしていくという。「ECはブランドの広がりをコントロールできない。親和性のあるショップと取り引きして、共感いただけるユーザーとともに、じっくりとブランドを成長させていきたい」。ゆくゆくは直営店を持ち、ファッションショーにも挑みたいとビジョンを描く。
森デザイナーは1998年生まれ。服飾の高等学校を卒業し、大阪のショップ「11747391」での販売員を経て上京。「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」や「アンダーカバー(UNDERCOVER)」でインターンをしながら、独学でハンドメードのアクセサリーを作り、20歳で「クリティカルラボ」を立ち上げた。