ツイードジャケットといえば秋冬のイメージがありますが、“サマーツイード”という呼び名があるように、実は春夏のスタイルを格上げしてくれるキーアイテムでもあります。ジーンズやショートボトムスに取り入れるだけで、ぐんとクラシックに。適度な“ずれ感”がセンスを漂わせます。英国ムードやレトロなムードを醸し出せるのも、ツイード素材ならでは。今回は、型にはまらない自由なツイードコーディネートをご紹介します。
ウイメンズのツイードを世に広めた「シャネル(CHANEL)」。今なおブランドのアイコン素材ですが、2024年春夏パリ・ファッションウイーク会場には、ツイードジャケットにデニムパンツのコーディネートでキメたペアが来場。リッチでレトロなツイードジャケットの長所を引き出しつつ、ジーンズで外すさじ加減がお見事です。タイムレスに着られるツイードは、ボトムスを選ばない懐の深さも魅力の一つ。人気の高まりを受けて、従来の色や柄、シルエットとは一味違うデザインも登場しています。
意外なムードミックスで“ずらし”テク
ツイードの持ち味は品格と気高さ。普通はこれらを引き立てるスタイリングが基本ですが、あえて“ずらす”選択肢もありです。別のムードを盛り込むことで、サプライズな着映えに仕上がります。
「サカイ(SACAI)」は、ハワイアンプリントのような南国柄のビスチェとショートパンツに、ツイードジャケットを重ねました。全体をモノトーンでまとめつつ、トロピカルモチーフと格子柄をクロスオーバーさせて、“ビーチルック×ノーブル”とムードをミックス。足元はボリュームのあるブーツで、スレンダーさを引き出しました。
総柄でレトロが気分
クラシックなツイードジャケットをキーピースに据えて、レトロ調にまとめれば、ノスタルジックなコーディネートが完成します。
「リバティーン(LIBERTINE)」は、全身を柄で埋め尽くしたスタイルを披露。ドット柄のボウタイブラウスとパンツのセットアップに、チェック柄のツイードジャケットをオンして、異なるモチーフが響き合う“柄on柄”に仕上げました。懐かしいムードを帯びたウエア同士が相乗効果を発揮。メタリックのメダルや、60年代風の大ぶりサングラスも、レトロな印象に一役買っています。
NY風“ゴージャス×ヘルシー”
クラシカルなツイードジャケットに遊び心や職人の手仕事を加えたデザインも発表されています。華やかなパールモチーフをツイードジャケットにあしらったのは、「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」。襟から前立て、さらに袖先にもパールを連ねました。そんなリュクスなデザインに、爽やかな白Tシャツとストライプ柄のパンツと合わせて、エフォートレスなルックにアレンジ。ツイードのリッチさを逆手に取ったスタイリング術です。キャップをかぶって、ヘルシーなニューヨーカースタイルを印象付けました。
クラシックにグランジの隠し味
スーツスタイルをかしこまって見えないようにするには、ディテールの演出が肝心。グランジライクなほつれやダメージ加工が、トーンをやわらげてくれます。歩くたびにリズミカルな表情が生まれるおまけ付きです。
「アーデム(ERDEM)」は、クラシックなシェイプのツイードスーツを仕立てました。ジャケット裾のペプラムがクラシカルな印象を濃くする一方で、スカートはところどころでツイードがほつれ、まるでフリンジのよう。グランジテイストとのミックスが味わいを深くしました。
ブルーの濃淡で爽やかクールに
色のバリエーションも広がっています。暖色系やベージュ、グレーなどが多く見られる中、クールなブルーは爽やかな春夏のスタイルにぴったり。清涼感のある着こなしに取り入れたい色です。
ほぼスリーブレスのツイードジャケットは、見るからに涼しげ。「マディソンブルー(MADISONBLUE)」は、サマールック用にツイード生地を軽やかに操りました。ボタンを開けてTシャツをのぞかせ、リラクシングな見え具合に。ブルーの濃淡でコントラストを効かせています。膝下丈のスカートが“きちんと感”をキープ。上下ともアイシーな淡いブルーで統一して、涼しげなムードを高めています。
上質な素材感が際立つツイードジャケットは、イージーになりがちな春夏ルックを格上げしてくれます。1枚で品格が備わるので、残りのアイテムで遊びやすいのもうれしいところ。あえてカッチリ着ないことで、こなれた印象を引き出せます。ツイードジャケットの出番を増やして、着こなしレパートリーを広げてみてはいかがでしょう。