クワイエット・ラグジュアリーをアップデートしながら、“クワイエット・ラグジュアリーの先”を探究する―。これが、2024-25年秋冬ミラノコレクションの総括だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月11日号からの抜粋です)
ごくごく一部の若手を除き、コレクションが半年おきに激変するブランドは消滅したと言って良いだろう。そんなブランドは人々の支持を失っており、ビジネスは急速に縮小。トレンドを追い続けるだけでどうにかしてきたブランドは今、慌ててアイデンティティーの確立を画策中だ。色や柄、コラボレーションで刹那なハイプ(熱狂)をあおってきたストリートの時代は終わり、ことラグジュアリー・ブランドが獲得を目指す若い世代や次世代富裕層は、全く新しいものを提案し続けることで半年前や1年前のコレクションの価値を自ら毀損してきたファッション業界特有の商習慣に懐疑的。ここに、定番を自由に着ることが個性の表現につながると主張する多様性や、普遍的だからこそいつでも着られると訴えるサステナビリティの価値観も絡み合い、クワイエット・ラグジュアリーというスタイルは芽生え、ここ1年で急速に広がり、この世界をリセットした。だからこそ、クワイエット・ラグジュアリーをまたしても簡単に捨て去り、全く違う別の何かを模索することは自己否定につながってしまう。そんな思いがあるのだろう。今シーズンのミラノは総じて、クワイエット・ラグジュアリーのアップデートに挑んでいる。
ミラノベストは「グッチ」
洋服作り追究の姿勢に拍手喝采
アップデートだから、どのコレクションも既視感に溢れ、鮮度のない、退屈なものになってしまったのか?と聞かれたら、答えはノーだ。アップデートでも共感、むしろ感動させることができる。それを見事に証明したのは、「グッチ(GUCCI)」だ。
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