花王とアイスタイルは11日、“皮脂RNAモニタリング”技術を核としたビジネスの共創を目指す「RNA共創コンソーシアム」を共同で設立した。花王とアイスタイルが理事となり、コーセー、マツキヨココカラ&カンパニー、キリンホールディングス、パーフェクト、ヘルスケアシステムズを幹事社として迎える。口コミとRNA肌遺伝子モードを組み合わせた化粧品を選ぶ“マッチングシステム”を構築したサービスの実装を目指し、メーカーや流通の垣根を超え、ビューティ&ヘルス産業全体でサステナブルな消費サイクルに挑む。
“皮脂RNAモニタリング”技術とは、あぶらとりフィルムで顔の皮脂を採取し、その皮脂からRNAを抽出して分析する花王独自の解析技術。2022年からアイスタイルの口コミサイト「アットコスメ(@COSME)」会員6000人規模の皮脂RNAを収集し、選ばれる化粧品の傾向を解析する取り組みを進めてきた。この共同の取り組みで得られた皮脂RNAと画像情報をもとに、花王はこれまで皮脂を直接顔から採取しなければ解析できなかった肌タイプ分類(肌遺伝子モード)を顔写真から特定する技術も開発した。
花王の西口徹 取締役 専務執行役員は「RNA技術は研究の粋を飛び出し、社会実装のフェーズに進む。今の市場は多くのものが存在しており、生活者において豊富な選択肢がある中で“無駄のない自分に合う商品探し”がこれからの消費にとって大きなテーマになってくる。生活者の選び方が変わり、流通の売り方やメーカーの作り方も連動して変わっていく。その新基準を市場に生み出すことで、生活者の未来のウエルビーイングを追求しながら、無理なく無駄のないサステナブルな市場発展に貢献していくことを目指す」と抱負を語った。皮脂RNAモニタリング技術を活用し、「買っても買っても理想に出会えない化粧品迷子を救う」ことを目指す。
アイスタイルの濱田健作 上級執行役員 CSO兼経営戦略室長は「国内外を含め、化粧品ブランドは毎年増え続け、それに伴い情報量も爆発的に増えている。生活者は自分にあった化粧品を探すことが少し難しくなり、中には放棄している人もいる。RNA技術が世の中に浸透し多くの企業が参加することで、結果的に生活者が安定(して選ぶことが)できるのでは。アイスタイルもそこに負けないように、取り組んでいく」。
今回、花王から声がけがあったというコーセーは、中長期ビジョンでメイクとスキンケアのみならず医療との境界領域を包含したウエルビーイング領域まで提供価値を広げることを掲げている。原谷美典 執行役員 経営企画部長は「今回、体や肌の状況変化を反映できる可能性の高さに注目した。その肌状態に合わせたカウンセリングや接客、化粧品作りを視野に入れ一緒に注力していく」と述べた。
記者会見に登壇した経済産業省の堀部敦子 商品・サービスグループ 生物化学産業課 生物多様性・生物兵器対策室 室長は「自分にとって合わない商品を回避するということを考えると、合わないという理由で捨てられてきた化粧品の廃棄を減らすという効果も期待できる。今は誰もがSDGsという言葉を知らない人はいないという世の中で、『作る責任』『使う責任』を果たし、地球環境にも優しい経済活動に大きく貢献していただければ」と期待を寄せる。
一方、新しいサービスに課題はつきものだと指摘する。「個人の情報をどのように保護していくのか慎重に検討してほしい。そして、RNA情報以外の肌に関する情報をしっかり集積しながら適切な目的で活用し、“テーラードコスメティクス”の開発につながることを期待している。将来的には日本を飛び出し、世界でも活用してほしい」と締めくくった。