毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月11日号からの抜粋です)
木村:2024-25年秋冬のミラノコレでは“クワイエット・ラグジュアリー”の次を探そうと頑張りましたが、難しかったです……。アイテムは引き続きテーラード、色もあまり変化がなかったです。
村上:革新的な提案はなかったですね。でも“クワイエット・ラグジュアリー”で装飾を減らし、服をゼロ地点に戻した動きから次のフェーズを見つけていこうというムードはありましたよね。私は「ジル サンダー(JIL SANDER)」や「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」に代表される“心地よい服”“優しい気持ちになれる服”の流れが気になりました。
木村:そうですね。確かに「ジル サンダー」には次の方向性を感じました。同じ流れは「マックスマーラ(MAX MARA)」にも漂っています。色や柄では主張しない、着る人が一番きれいに見える服。でも時には強めのシルエットで女性をエンパワーメント。「タフな時代の逆風に負けない。でも優しさも忘れない」というメッセージを受け止めました。
村上:「プラダ(PRADA)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」の影響力も引き続き。個人的には「グッチ(GUCCI)」がめちゃくちゃよかったです。賛否両論だった前回のシンプルなデビューコレクションをブラッシュアップしたような「全然変わらない」内容で。細部にこだわった、いいものを作っている感じも終始一貫。観客のテンションが前のシーズンよりも明らかに高くて、フィナーレでの拍手も大きかったです。「洋服ってまだまだよくなれる」と感じたし、そんなメッセージを発するサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)への理解が進んでいます。
「ディーゼル」の自由なショーを満喫
木村:私は「ディーゼル(DIESEL)」のショーが楽しかったです。一般の人がランウエイ上のスクリーンにたくさん映っていて。1000人のブランドファンと一緒にショーを楽しもうというユニークな企画でした。映っている人たちはショーを見るよりも、画面越しにいかに自分をアピールするかに専念していて。被り物をしたり、宇宙人に扮したり、ものすごく多様で、自由。さすが「ディーゼル」でした。
村上:「ディーゼル」のコミュニティーがよく分かって、面白かったね。「“クワイエット・ラグジュアリー”なんて、何言ってるの?みんなもっと自己主張しちゃいなよ!」という感じ。そんな自分自身が大好きな人たちにブランドが支持されているのが垣間見え、コミュニティーと一緒にブランドの世界観を楽しむという今っぽさを感じましたね。