具志堅幸太デザイナーによるニットウエアブランド「コウタ グシケン(KOTA GUSHIKEN)」は12日、「楽天 ファッション ウイーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で2024-25年秋冬コレクションを披露した。東京都と日本ファッションウィーク・推進機構(JFWO)が共催するファッションアワード「東京ファッションアワード 2024(TOKYO FASHION AWARD 2024)」の受賞特典として、渋谷ヒカリエで開催した。公式インスタグラムで一般参加を受け付けたところ、約700人のゲストが集まった。
又吉直樹と好井まさおが
展示会コントで新作紹介
同ブランドにとって初のショーは、コントとバンド演奏がメインという意外性のある内容だった。舞台には、「コウタ グシケン」のニットを着用したお笑い芸人の又吉直樹と好井まさおが登場し、最新コレクションの展示会に行くという設定のコントを開始。又吉が新作13型を次々と試着する間、好井はそれに対して冷静にツッコミを入れる。果てには大型スクリーンを使用して「『コウタ グシケン』のニットか否か」クイズゲームを繰り広げ、会場の笑いを誘った。ショー後半には、展示会のゲスト役を演じた2ピースバンドの酩酊麻痺(めいていまひ)が登場。1月にリリースしたEP「光」から「朝のはなし」を演奏した。コントから一新して組まれたセットには、ブランドのアーカイブを多数吊り下げた。
具志堅デザイナーが4人を選んだのは、元々知人であったことに加え、個人的なシンパシーを感じていたからだという。「生きていると楽しさや悲しさ、幸せや絶望を感じるもの。そういった気持ちの過程をショーで表現したいと考えたとき、彼らも同じ思想を持っているのではないかと思い、一緒に舞台を作りたくなった」。ダメ元で連絡したところ4人全員が参加を即答し、実現した。
アーカイブややりたいことを“整理整頓”
最新コレクションのテーマは“orgnaseid well”で、具志堅デザイナーいわく、故意に誤ったスペルでつづり、「整理整頓(organised)したつもりだが自信がない」という意味を込めた。通常のシーズン発表後は、余暇を過ごしたり、展示会巡りをしたりしながら翌シーズンの準備をしてきた。しかし、昨シーズン終了後から、「東京ファッションアワード 2024」を受賞し、1月のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中に現地で展示会を初開催するまでの期間は、仕事やプライベートを含めて唯一できたことがアトリエの片付けだったという。パリでブランドの自己紹介をしようと、自身の学生時代のデザインを振り返った結果、今回の新作が生まれた。
全13型というコンパクトなコレクションには、具志堅デザイナーのやりたかったことを詰め込んでいる。例えば、学生時代の卒業コレクションで発表し、今では定番となったモナリザを編んだニットを、線描画のモナリザにアレンジしたほか、スコットランドのニットウエアファクトリー「ジャミーソンズ(JAMIESON’S)」とコラボした23-24年秋冬シーズンのセーターを、ベスト仕様に変えた。また、1940年代のスーツをベースにしたダブルジャケットや同柄のパンツ、ショルダーバッグ、ケープなどを全てニットで作った。
具志堅デザイナーが今シーズンの大きなチャレンジとしてあげたのは、リバーシブルのスカジャンだ。ほかのアイテムには日本製の糸を使用する中、スカジャンは光沢にこだわり、イタリア製のレーヨンとシルク混紡の糸を使った。
今回の演出については、「せっかくショーをするなら、ゲストに『楽しくていい時間だった』と思ってほしかった」とコメント。「今回のショーはあくまでアワード受賞の条件で開催しただけ。実はファッションショーよりも演劇やライブを観る方が好きなので」と述べ、今後は展示会のみでの発表に戻ることを明かした。1月のパリの展示会では海外の卸先も数件決まったといい、今後のブランドの知名度向上を目指すという。