経営再建を目指すサンフランシスコ発のフットウエアメーカー、オールバーズ(ALLBIRDS)は、共同創業者のジョーイ・ズウィリンガー(Joey Zwillinger)最高経営責任者(CEO)が退任し、ジョー・ヴァーナチオ(Joe Vernachio)最高執行責任者(COO)がCEOに昇格することを発表した。昨年5月に単独CEOとなったズウィリンガー前CEOは、取締役会メンバーおよび特別顧問として同社に残留する。同社は現在、商品の見直し、米国内の流通と店舗の最適化、海外戦略の見直し、コスト削減に努めているが、客単価の低下や販促費の増大、1型あたりの売り上げ個数減が続き道のりは険しい。
3月12日に報告した同社の2023年度第4四半期決算によると、オールバーズの売上高は前年同期比14.5%減の7200万ドル(約100億円)。純損失は5680万ドル(約84億円)で、通期では売上高は前期比14.7%減の2億5410万ドル(約375億円)、純損失は1億5250万ドル(約224億円)だった。
ヴァーナチオ新CEOは米「WWD」の姉妹メディア「FN(フットウエアニュース)」のインタビューに対し、計画通り改革を進めるとしつつ、改善の兆しはすでに見えていると自信を滲ませる。「この1年間で、我々はビジネスモデルを大幅に改善した。今こそ、顧客とともに勢いを取り戻し、ブランドを成長軌道に乗せる時だ」。
ヴァーナチオ新CEOによるとオールバーズは昨年、在庫状況の改善とコスト削減を実現するとともに、新商品の導入、そして物流の改善に取り組んだという。なお23年5月、同ブランドは、22年8月の8%に続き、従業員を9%削減することを発表していた。
こうした経営改革を踏まえ、24年度は1億9000万〜2億1000万ドル(約281億〜310億円)の売上高を見込んでおり、うちアメリカで1億5000万〜1億6500万ドル(約221億〜244億円)を稼ぐ見通しを発表した。粗利率は42〜45%を見込んでいる。
オールバーズにとって1年未満のうちに2度目のCEO交代
同社は、1年経たないうちに再びCEOを交代することになった。前回は、共同創業者で共同CEOであったティム・ブラウン(Tim Brown)が共同創業者兼チーフ・イノベーション・オフィサーに退いている。また、1月にはケリー・オルムステッド(Kelly Olmstead)をブランド・マーケティング担当の副社長からチーフ・マーケティング・オフィサーに、エイドリアン・ナイマン(Adrian Nyman)を新設したチーフ・デザイン・オフィサーに任命するなどの人事を発表していた。
ヴァーナチオ新CEOは、「この1年で首脳陣をアップグレードさせただけでなく、その下には非常に優秀なチームが構えている。ブランドとしての基盤とチーム力は、素晴らしい成功につながると確信している」と語った。
ヴァーナチオ新CEOは21年に最高執行責任者としてオールバーズに入社して以来、在庫の削減や流通の見直しに貢献してきた。23年、同社はヴァーナチオ新CEOの職務をマネージメント、海外戦略、最終的には商品開発まで拡大。入社以前は、アウトドア・アパレルブランド「マウンテンハードウェア(MOUNTAIN HARDWEAR)」の社長を4年間務め、同社の変革と黒字化に貢献した。またVFコーポレーション(VF CORPORATION)では「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のグローバル製品担当副社長として7年間勤務したほか、「パタゴニア(PATAGONIA)」や「ナイキ(NIKE))、「ルーツ(ROOTS)」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」、「スパイダー(SPYDER)」など経験豊かだ。
ブランド復活に向けた基本方針
ヴァーナチオ新CEOはズウィリンガー前CEOが描いた成長の柱をさらに強化する。商品に関しては、今後も“ウール・ランナー”のような人気の定番アイテムに焦点を絞り、消費者の共感を思うように得られなかった新モデルからは一旦手を引く。
「今後もブランドを象徴する定番シリーズに軸足を置き、消費者のスタイルや使用シーンに合った商品を絶え間なく生み出していく。また25年には、定番をリニューアルし、季節感あふれるストーリーで、魅力を発信したい」。
流通に関しては、「レイ(REI)」や「ノードストローム(NORDSTROM)」「パブリックランズ(PUBLIC LANDS)」「ハウスオブスポーツ(HOUSE Of SPORTS)」「シールズ(Scheels)」などの小売パートナーは、今後も同社成長にとっては重要だろう。
CEOへの昇格を自身のキャリアにおける 「クライマックス」と表現するヴァーナチオ新CEOは、ブランドの成長の可能性に改めて自信を示す。「変革は今まさに進行中で、やるべきことはまだある。しかし、今日までに実現してきたことには大きな意義がある。当社の前途がとても楽しみだ」。