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ブランド運営は全て自己資金 篠田麻里子が敏感肌ボディーケアに本気の理由

元AKB48でモデル・俳優の篠田麻里子がプロデュース・運営する「ヨカヨ(YOKAYO)」は、肌への優しさにこだわったボディーケア中心のコスメブランドだ。彼女の故郷である福岡・糸島の原料を使い、糸島の化粧品工場で生産する。ブランドスタート(2022年)から主にECで販売してきたが、3月31日に、エコサートコスモス認証取得のオーガニック処方にリニューアルした看板商品のボディーソープ(450mL、2800円)と新商品のボディーミルク(180g、3210円)の2商品を、全国の「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」で発売する。

ブランドは篠田本人が代表を務めるyokayoが運営。DtoCブランド事業などを展開するnewn(東京、中川綾太郎CEO)が経理や法務などバックオフィス業務を支援するが、ブランド運営は「全て自己資金でまかなっている」(篠田)という本気度だ。「私と同じように肌が弱い人たちに寄り添い、私なりのやり方で糸島に貢献できたら」と語る篠田に今後の展望を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ブランドを立ち上げたきっかけは。

篠田麻里子(以下、篠田):私自身、幼少期からアトピー性皮膚炎を患っています。食べるもの、肌に触れるものに気を遣うことで自分はなんとかなってきましたが、子供が生まれるタイミングで「この子もアトピーだったらどうしよう」という不安がすごく大きくて。私のように肌に悩んでいる人に寄り添うブランドを作りたいという気持ちが芽生えました。

WWD:市場には敏感肌向けのボディーケア商品がすでにある。どうして自分でブランドを?

篠田:私はシングルマザーとして育児をしています。その大変さを身に染みてわかっているつもりです。もちろん私も、たくさんの敏感肌向けボディーケア商品を使ってきました。ただ育児って、みなさんが想像する以上の“タスク”に追われているもの。お子さんをお風呂に入れるのだって一苦労です。市場に流通しているオーガニック系のボディーソープは300mLくらいの容量のものが多いのですが、実際に子どもを抱えながらポンプを押そうとすると、本体が軽くてボトルが転んじゃったりして、意外と厄介なんです。それに容量が少ないと、頻繁に中身を入れ替えなくちゃいけませんし。「ヨカヨ」のボディーソープは480mLの大容量。ボトルは少しずんぐりとしちゃいましたが、きっとママさんなら共感して喜んでいただけるポイントだと思っています。容器には環境にやさしいバイオマスプラスチックを使用しています。

WWD:「ヨカヨ」の処方についても教えてください。

篠田:いきなり容器からアピールしてしまいました(笑)。「ヨカヨ」のボディーソープとボディーミルクには糸島二丈の天然温泉水を使っています。この温泉水は私が幼い頃からお風呂に浸かったり、飲んだりして、ずっと身近にあった水。この温泉水をどうしても「ヨカヨ」に入れたくて、そして肌が弱い私がずっとお世話になってきた「コスメキッチン」に置いてもらいたくて。

2年前から「コスメキッチン」のバイヤーである下田裕華さんに二人三脚で協力していただきました。下田さんはオーガニックへの思いがすごく熱い方なのですが、私の糸島への思いも汲んでくれた上で一緒に処方を考えてくださったりと、頭が上がらない思いです。エコサート最高水準の「コスモスオーガニック認証」はならずとも、それに次ぐ「ナチュラル認証」の取得がかない、「コスメキッチン」で置いていただけることになりました。ボディーソープは泡立ちも、保湿力もすごくいいですし、ボディーミルクはベタつかずすっと馴染む浸透性が心地いいです。周りの近い人にも、「これ、よかよ(博多弁で“いいよ”)」と自信を持って薦められるものができたと思っています。

WWD:「コスメキッチン」で取り扱うことに加え、篠田さん自身の発信力でも知名度が広がりそうだ。

篠田:ただ、ブランドが一人歩きしてしまうのが怖いんです。かつてアパレルブランド※をプロデュースしていた時期がありました。成功した、とは決して言えないけれど、すごくいい勉強になりました。「ブランドをやるのってすごく難しいんだ」と身に染みて学びました。自分の作りたい服はあっても、でき上がってくる服は理想通りになるとは限らない。それでも折り合いをつけて走り続けなきゃいけない中、いつしか売れ線のデザインに寄っていき、自分のやりたいこととブランドが離れていくのを感じました。

※篠田は自身のアパレリブランド「リコリ」を2012〜14年にかけプロデュースしていた。

新しいことに挑戦するのが恐くなっていた時期もありましたが、またやると決めたからには、「プロデュース」ではなく本気でコミットしないとダメだと思ったんです。自己資金でやると決めたのもそれが大きな理由です。もちろん、それが自分の首を自分で締めているのは分かっているんですが。数字が大嫌いで、売上管理などのエクセルデータを見ていると本当に嫌すぎて涙が出てくることがあります(笑)。経理や法務の部分ではnewnさんにサポートいただきながら、今でも毎日勉強させてもらっています。ブランドは自分1人ではできないものだと実感します。

WWD:なぜもう一度ブランド運営に挑戦した?

篠田:人に喜んでもらいたいという気持ちと、糸島の役に立ちたいという気持ち、その両方からです。

歳をとるにつれ、ようやく自分について理解できることはありますが、私はやっぱり「人に喜んでもらえること」が好きなんだなと。アイドル時代を振り返っても、ファンの方に「元気が出ました」「勇気をもらいました」と言ってもらえるからがんばれていました。自分なりに人のためになることをするのが、私の人生なんだなと思います。

若い頃は素通りしていたような「地元のありがたみ」も感じるようになりました。実家に帰ると自然の温かさや変わらない景色に触れて、自分がリセットされる感覚があります。子供たちにこの糸島の自然を残していきたいです。地元に貢献する方法は色々あります。私が積極的にメディアに出て糸島の名前を出すことも一つですし、お金を寄付してもいいかもしれない。ただ糸島がずっと住み続けられる場所であるためにはどうしたら、という長い目線で考えると、「そこにやりがいのある仕事があるかどうか」が一番大事なんじゃないかな。

「ヨカヨ」のボディーソープは地元の酒造の酒粕や、甘夏の果皮油を使用しています。従来は破棄されていた素材をアップサイクルしているんです。商品製造をお願いしているピュールさんは、糸島に自社工場を構え、風車を使ったサステナブルな発電や廃棄削減、女性雇用の促進などさまざまな努力をされています。「ヨカヨ」に関わる全ての人と交流しながら、一緒に商品を作り上げていくプロセス自体がすごく楽しい。これからも皆さんと仕事がしたいし、ここで働きたいと思う人がもっと増えたらいいですね。

WWD:商品展開を広げる考えは?

篠田:ゆくゆくは、とも思いますが、苦労して作ったボディーソープはまるで自分の子供みたいな思い入れがあって、まずこの子たちをじっくり育てたいです。何個も矢継ぎばやに新商品を出そうという考えはありません。

「ヨカヨ」に込めた思いを伝えるには、「商品を売ること」以外にもできることはたくさんあると思っています。例えばママさんを対象にした親子ワークショップなども不定期で実施していて、使わなくなったおもちゃのフリマを開催したり、おもちゃを集めて施設に寄付したりしてきました。私も子供が4歳になり、ようやく少しは手がかからなくなってきました。大変なママたちの苦労や不安を理解し、分かち合えることがあると思いますから、活動の幅も広げていけたらいいですね。「ヨカヨ」はそんなふうに、皆さんとの“繋がり”を生み出すコミュニティーにできたらと考えています。

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