ファッション
連載 エディターズレター:FROM OUR INDUSTRY 第100回

新進気鋭のメンズブランドが教えてくれた新しいジェンダーのあり方

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2024-25年秋冬の「楽天 ファッション ウィーク東京」が終わりました。終わっていないのは、私のリポート(苦笑)。今週も随時更新する所存ですので、皆さんご期待ください!

今回の東コレで一番印象深いのは、「結果、新進気鋭のメンズブランドが教えてくれた新しいジェンダーのあり方」です。


それは、開幕イベントとして開かれた「M A S U」のインスタレーションから明らかでした。このイベントは、パリで発表した24-25年秋冬コレクションをインスタレーションと共に映像で発表するもの。正直、初めてちゃんと「M A S U」の洋服に触れましたが、「あ、こういう洋服が、それなりに多くの男性を魅了する時代になったんだな」と改めて実感する良い機会でした。

順番に説明してみましょう。まず「こういう洋服」とは、「結果的にはジェンダーニュートラルと捉える人もいるだろう洋服」です。まどろっこしいですね(笑)。でも、これは「ジェンダーニュートラルな洋服」とは違います。

コレクションには、ロングスカートや、透け感につながるパンチング素材のフレアパンツ、ハートのモチーフ、スパンコールの装飾、デコルテが露になるベストなどが登場します。文字だけを追うと、フェミニン、もしくはジェンダーニュートラルです。でも後藤愼平デザイナーは、こうしたアイテムを「ジェンダーニュートラルなコレクションにするため」に提案していないだろうし、そもそも「ジェンダーニュートラルなアイテム」とも思っていないでしょう。きっと、ただ彼は単純に、良いもの、カッコ良いものと思って、上述のアイテムを提案しているハズ。そして、それを「ジェンダーニュートラル」と解釈する人はいるかもしれない。そんな感じです。さらに、おそらく後藤デザイナーは「ジェンダーニュートラルですね」というリアクションを、肯定も否定もしなさそう。従前からジェンダーに対する既成概念は瓦解しつつあると思っていますが、「あぁ、本当にもう、ジェンダーって考えは必要ないのかもな」、そんな風に感じたのです。

そして、そんな彼のクリエイションやスタンス、考え方は、大多数ではないかもしれないけれど、それなりに多くの男性を熱狂的に惹きつけ、だからこそ、(私のように!?)旧態依然な人たちは、「M A S U」がファンを大事にするイベントを開いて多くの男性を集客しているたびに(余談ですが、後藤さんには、このコミュニティー作りについても聞いてみたいと思っています)戸惑ったり、「何が起こっているんだろう?」と不思議に思ったり、ゆえにず〜っと注目したりしています。

そして今回の東コレでは、たとえば「タナカ(TANAKA)」、こうしたブランドに比べれば“男っぽい”「カミヤ(KAMIYA)」とかさえ、もうあんまりジェンダーのことを考えていなさそうだし、そんなクリエイションにファンは魅了され、コミュニティーが完成しつつあることを痛感しました。正直、私は「タナカ」のコミュニティーには属していません。個人的には、あんまり共感できていないと思います。でも、私よりもずっと共感しているメディアの方もいらっしゃったし、心酔・陶酔している人の存在も見えました。少なくとも、私個人の嗜好で一刀両断することは憚られ、「そのコミュニティーに属している人は、どう思うんだろう?」という想像力を働かせなければ。そんな風に、改めて気が引き締まりました。

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