ファッション
特集 パリ・コレクション2024-25年秋冬

2024-25年秋冬パリコレからのメッセージ 「何てことない日常を特別に」

有料会員限定記事

2024-25年秋冬パリコレからの提案は「何てことない日常を特別に」

2024-25年秋冬パリ・コレクション特集を読むとき、おススメのBGMは竹内まりやの「毎日がスペシャル」。雨に降られても、自分が人気者でなくても「何でもない1日が実はとても大切」と歌うあの曲だ。ヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督の映画「パーフェクト・デイズ(PERFECT DAYS)」を見た人は、役所広司が演じる姿を回想しながらルックをチェックするのも悪くない。終わらない戦争、高騰する生活費、あふれるSNS上の虚像・虚栄など、私たちを取り巻く環境はストレスフルだ。そんな日常で奮闘する人たちに向けて提案する「なんてことのない日常に見つかる特別な時間」、それが今季のパリコレからのメッセージだからだ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月18日号からの抜粋です)

「アンダーカバー」のBGMはヴィム・ヴェンダース監督の朗読

サカイ(SACAI)」の阿部千登勢デザイナーは、1月のメンズショー後のバックステージで「改めて普通に生活できていることを感謝している」と話したが、その考え方が広がっている。象徴的なのが表紙で取り上げた「アンダーカバー(UNDERCOVER)」である。1人の女性のある1日を描写するコレクションの背景に流れるのはなんと、ヴェンダース監督がこのために書いた物語「Watching a Working Woman」の朗読だ。主役の「彼女」は8歳の息子がいる40歳のシングルマザー。朝起きて、息子の世話をし、職場では同僚と適度にうまくやり、眠りにつく前の読書を楽しみにしている。世界中に何億人といる、普通の女性だ。デニムやスーツなどシーンに応じたアイテムはまさに日常着だが、異素材を圧着しひねりを効かせ、「ブリジット・タナカ(BRIGITTE TANAKA)」とコラボした買い物バッグはスカルから花が飛び出しユニークだ。そんな少しのひねりが「彼女」の日常に潤いをもたらしている。

きらびやかなイブニングルックを得意としてきた「ラバンヌ(RABANNE)」は一転、“ウエアラブル・ラグジュアリー”をテーマにしたレイヤードスタイルを見せた。ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクターは「今の複雑な世界の状況を考えると、自分の身の回りにいる人々というリアリティーのあるスケールに戻るべきだと思った」と語り、街や地下鉄の中にいる女性を観察するところから制作をスタートしたと話す。だからスタイリングも完璧ではない。雨が降ってきたからあわててブランケットを巻き付けたりといった「洗練されているものでも、見せびらかすためのものでもなく、その人らしさやライブ感がある」ものが魅力的に映る。

この続きを読むには…
残り2301⽂字, 画像9枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。

SACAI x ファッションの記事

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。