TSI子会社でD2Cブランド運営を主な事業とするHYBESのウィメンズブランド「シャロル(CHAROL)」は、フォロワー約17万(2024年3月時点)を抱えるインフルエンサーのHINANOをディレクターに据え、22年秋冬にスタートした。実店舗を持たず、ECを主軸として利益率を高めるのがD2Cブランドの定石だが、「シャロル」はリアル出店にも積極的だ。昨年3月から半年間限定で新宿ルミネ2に店舗を構え、2期目となる25年2月期中には2店舗程度の常設出店を計画する。
「エトレトウキョウ」の成功事例を共有
「シャロル」のメインターゲットは 20代後半〜30代。「いわゆる“量産スタイル”にはなりたくなくて、セレクトショップや海外のファッションECで服買うこと多かった」というHINANOが、「個性やデザインを値ごろに楽しめる服を作りたい」とブランドを始めた。ハートモチーフを総柄であしらったニットや透け感のあるプルオーバー、ビンテージ感のあるワイドシルエットのジーンズなどをそろえ、ガーリーテイストにほどよいカジュアル感、モード感を添えて楽しむ提案だ。
D2Cブランドの選別淘汰が進む中で、「インフルエンサーがインスタで写真を上げさえすれば、ポンと売り上げが立つ時期は過ぎた」とHYBESの二階戸貴志社長。「インフルエンサーが自己満足で服を作っていたり、ファンが求めている物を作っているだけではブランドは長続きしない。インフルエンサーとファンが同じ方向を向き、一緒に成長していけるような関係を作ることが大事で、リアルの接点も必要になる」と話す。
成功事例が19年にHYBESに加わった「エトレトウキョウ(ETRE TOKYO)」。「エトレ」はEC専業としてスタートしたが、その後新宿、名古屋、大阪にリアル店舗を構えた。「(ディレクターの)JUNNAがリアル店舗でファンとの相互理解を深め、ブランドのモノ作りとファンのニーズがガッチリ合ったことで、売り上げも一気に増えた」。
インフルエンサーとファンが
「同じ方向を向く」ための準備期間
「シャロル」も、ブランドスタートからの1年は「HINANOの作りたいものとファンのニーズのすり合わせるための準備期間」(二階戸社長)と捉える。新宿ルミネ2店の期間限定出店は学びになった。実際の来店客は、ブランドターゲットの年齢層よりも低い10代後半〜20代前半が中心。ECではベーシックなデザインの商品が動いたが、リアル店舗の売れ筋はシャギーコートやブランドの頭文字である“C”を刺しゅうであしらったニットなどで、「デザイン性のあるアイテムでも勝負できる」という手応えを得た。阪急うめだ本店、ジェイアール名古屋タカシマヤといった都心百貨店でもポップアップストアを実施し、目の肥えた客の反応を確かめた。
HINANOは「ファンの皆さんが求めているものと自分の“好き”を混同し、ブランドが中途半端になってしまっていたと気が付いた」と反省し、「自分がやりたいことと求められていることのギャップをゆっくり埋めながら、ブランドをいい方向に軌道修正できたら」と前を向く。二階戸社長は「『エトレ』では3年かかったことを、『シャロル』ではその半分の時間でできるはず」と手応えを得る。今年は2店舗程度の常設出店を計画し、以降もファッションビルや百貨店で継続的に出店していく考えだ。
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