「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は2024-25年秋冬シーズン、メンズの「アンリアレイジ オム(ANREALAGE HOMME)」を立ち上げ、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO. 以下RFWT)」で発表した。
メンズは、先端テクノロジーを搭載した生地で作ったり、独創的なパターンを生み出したりのウィメンズとは全く異なるアプローチだ。森永邦彦デザイナーも、「ウィメンズとは真逆に位置するメンズ像を構築し、東京で発表しようという気持ち」とメンズラインのスタート、そしてRFWT参加の経緯を語る。今シーズンは、自身の原風景を探り、洋服を作り始めた2000年代初頭の原宿の街をイメージしながら、装飾性を意識した。ファーストルックは、総ボタンのセットアップ。ジャケットと膝下丈のショートパンツには、隙間がないほどビッシリとピンクのボタンを並べた。以降もブルゾンにはフェルトなどの生地で作った花が咲き、ツイードのセットアップは金ボタンで装飾、ブリティッシュチェックのジャケットにはたくさんのワッペンをあしらった。ウィメンズとは全く異なるアプローチと言いつつ、ニットをパッチワークしたようなダウンブルゾンやショーツは、2012-13年秋冬ウィメンズ・コレクションを彷彿とさせる。「残像」という発想を取り入れたシーズンだ。
そこに、言葉通り2000年ごろの原宿の自由なムードを取り入れている。洋服を自由に楽しみ、ジェンダーの既成概念にとらわれず、歯向かうというよりは意識せずに好きなものを取り入れる現代に通じる感覚の原点だろう。オーバーサイズなのにクロップド丈なジャケットにはスカート、モールのような生地感のショーツや、半身がスカートのパンツ、幾重にも重ねた帽子など、スタイルやクリエイションはフリーダムだ。
終盤は、手仕事に圧倒される。「リーボック(REEBOK)」とのコラボは、空気を入れると膨らむ“ポンプフューリー”のよう。小さなニットを剥ぎ合わせて大きなニットを作ったり、異素材を切り返したように見えるトロンプルイユのブルゾンの上に実際異なる素材をパッチワークしたりの発想は、「アンリアレイジ」らしい。その迫力に感嘆する業界人も多かった。
ウィメンズでも「美しい洋服に仕上げれば良いのに」
ただ、メンズを立ち上げたからこそ、それが「ウィメンズとは異なるアプローチ」だからこそ、強くリクエストしたいことがある。そろそろ、王道の美しいパターンも、形にしてみるのはどうだろう?
紫外線で色が変わったウィメンズを見た時から、「革新的ゆえ大勢に感嘆してもらえる素材だからこそ、美しい洋服に仕上げれば良いのに」と考えたものだ。素材の“硬さ”などが原因なのだろうか?誤解を恐れずに言えば、「アンリアレイジ」のパターンは洗練を避けているように映る。その思いは、パターンが命のジャケットを避けて通れないメンズだからこそ、なおさら募った。
今冬発表した“ドラえもん”に着想したウィメンズのように、「アンリアレイジ」は、新しいパターンを追求したい思いが強いのは理解しているつもりだ。しかし、「真逆に位置する」というなら、メンズでは王道のパターンワークに取り組んでも良いのではないか?正直、ダッフルやベースボールブルゾンなどでニットを多用したのは、緻密なパターンワークを避けようとしているのでは?と邪推してしまう。
森永デザイナー同様、2000年代初頭には原宿に憧れていた身として、あの頃と今は、決定的に違うことがあると思っている。それは、今の世代は「本物」、歴史に裏付けられた「本物」に価値を抱くということだ。だからこそ、王道のパターンは避けては通れない。そして、それを身につければウィメンズもまた一歩、進化出来るはずだ。