中央が熱に対応する“スキーマテック ソーラーブロック”、右が蒸れに対応する“スキーマテック エアロ”。左は“スキーマテック”を使ったトレーニングウエア
デサントは、オリジナルブランド「デサント(DESCENTE) 」の最上位パフォーマンスカテゴリー“プロ(PRO)”から、2024年春夏シーズンの新作を発売した。生地が“はためく”ことで空気を循環させるシリーズをはじめ、独自の機能ウエアをそろえる。大阪・茨木のアパレル開発拠点「DISC(デサント イノベーション スタジオ コンプレックス)OSAKA」にプレス関係者を招き、実演を交えて機能性を訴求した。
“プロ”は、「デサント」のパフォーマンスウエアの頂点に位置するカテゴリーで、23-24年秋冬シーズンに始動した。ファーストシーズンは、1枚の生地を部位別に融解したり、編み方を変えたりすることで、伸縮性や通気性、耐久性など異なる機能をもたせる技術“スキーマテック(SCHEMATECH)”にフォーカスし、スキージャケット(22万円)やゴルフジャケットなどを作った。
“スキーマテック ソーラーブロック”
UPF50+の機能糸を使い、太陽光の吸収を抑える
部位により編みを変え、通気性や気心地などを高めている
今シーズンは、“スキーマテック”の技術を継承しながら、運動時の疲れにつながる“熱”と“蒸れ”の解決を目指した。熱に対応するシリーズ“スキーマテック ソーラーブロック(SCHEMATECH SOLAR BLOCK)”は、
未着用時に比べて50倍以上の時間日焼けを防止する効果がある“UPF50+”の機能糸を使ったオリジナル素材“サンスクリーン(SUNSCREEN)”をメインに使用した。さらに“スキーマテック”を駆使して胸や背中心、脇下といった発汗しやすい部位の編みを粗くして、風を通しやすくしている。
“スキーマテック エアロ”
脇下から背中にしつらえたヨークで空気を取り込むユニークな設計
蒸れの改善に着目したシリーズ“スキーマテック エアロ(SCHEMATECH AERO)”は、 腕の振りを活用するユニークな設計が特徴だ。両脇から背中にヨークをしつらえ、走行時に同部分がはためくことで、ウエア内部に空気を取り込んで蒸れを抑える仕組みだ。同シリーズも“スキーマテック”を使って部位別に編みを変えることで、より効果的な通気性をもたらしている。
“スキーマテック エアロ”を着用したスタッフの実演
腕の振りに合わせてヨークがはためく
腕の振りに合わせてヨークがはためく
モーションセンサーでウエアと体の動きを測定し、より効果的なパターンワークを追求
モーションセンターでウエアと体の動きを測定し、より効果的なパターンワークを追求
発汗サーマルマネキン
小さな穴から人間のように汗を出す
これらの製品化を可能にしたのが、「DISC 大阪」の最新設備だ。同拠点ではアイデアをすぐにサンプル化するため、量産工場と同じスペックの機器を持ち、約50人のパタンナーが所属する。さらには全天候に対応する100mトラックや、人の動作を測定するシステム、マイナス30度から60度まで温度と湿度をコントロールできる部屋、人のように汗をかくサーマル発汗マネキンなど、さまざまな機能を検証する設備が整う。“プロ”の新作にもこれらを駆使しており、例えば“スキーマテック エアロ”は、ウエアのヨーク部分にモーションセンサーをつけて、スタッフによる走行データを分析し、より開閉しやすいパターンを追求。さらには気温30度、湿度40度の環境で、発汗サーマルマネキンにウエアを着せて腕振り運動を行い、一般的なポリエステル100%の吸汗速乾素材と比べて湿度を約20%減少させる実証結果を得た。「社内で立てた仮説をサンプルにし、性能を検証するまでの一連の工程を施設で完結できる。商品開発のスピードとボリュームと質の向上につながっている」(開発担当者)。
価格は、“スキーマテック ソーラーブロック”がフーディー3万5200円、Tシャツ1万8700円、パンツ2万4200円、ショーツ1万8700円、“スキーマテック エアロ”がTシャツ2万6400円、長袖Tシャツ3万800円、ショーツ2万2000円、ノースリーブシャツ1万9800円。スポーツウエアとしてはかなり高価な部類だが、開発背景を知ると価格設定にも納得できる。
「デサント」は既存直営店のリニューアルを実施し、店頭でサイネージやポップを使ってブランドの背景を伝える取り組みを強化している。開発現場を知らないユーザーに商品の背景をどこまで伝えられるかが、売れ行きを左右するだろう。