「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へのオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月25日号からの抜粋です)
「まず、この素晴らしい旅を通して、私を支えてくれた業界と人々に心から感謝の意を表したい。情熱と挑戦、そして何よりもストーリーテリングという芸術への揺るぎない愛に満ちた人生だった」。これは今年2月、英国女優のヘレン・ミレンが、アメリカン・シネマテク・アワードの授賞式に登壇したときのスピーチだ。“感動的”なこの内容を万感を込めて朗々と語ったヘレン・ミレンだったが、語り終えた途端「以上!AIが書いたスピーチでしたー」と読み上げていたスピーチ原稿を大げさに引き裂いて、堂々捨て去ったのだ。観客は当然のこととして大喝采! しばらく拍手が止まなかったほど。
言うまでもなく、ハリウッドでは去年から脚本家協会が主体となって、俳優や裏方のスタッフと共に、ストライキを敢行している。生成AIの登場が自分たちの仕事を脅かしていることへの抗議である。例えば脚本も、必要な要素を入力するだけで、間違いなく人を感動させるシナリオをAIがあっという間に書き上げてしまうと言われる。
またエキストラも基本となる人間の動きを取り込めば、目的に応じて生成AIが俳優の姿を作り上げてしまうので、必要な人員は激減すると言われるのだ。脇役俳優や演出も含めて、多くの仕事がAIに取って代わられる可能性を秘めている。過去に例を見ない死活問題と言うべきだろう。だからヘレン・ミレンのこのスピーチ。単なる受け狙いではない、どれだけ多くの人を勇気づけたか分からないのだ。
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