ファッション

「クラネ」が海外のハイブランドと“肩を並べた”1日

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松本恵奈が社長・ブランドディレクターを務めるクラネデザインの「クラネ(CLANE)」は20日、京都高島屋S.C.本館1階に新店舗をオープンした。売り場は約50平方メートルとコンパクトではあるものの、衣料品カテゴリーにおいては海外ハイブランドの独壇場である都心百貨店の1階に店を構えた意味は大きい。この日店頭に立った松本は、「ブランドが新たなステージへと一歩を踏み出せた」と手応えを話した。

店舗は、河原町通側の本館正面出入り口から向かって左手に通路を進んだ突き当たりにある。周囲の売り場からはやや独立した環境で、トラフィックの多い1番店の新宿ルミネ2店とは対照的な、ゆったりと服を選べるプライベートな空間だ。

周辺には、「ティファニー(TIFFANY)」「ゴヤール(GOYARD)」「ベルルッティ(BERLUTI)」といった高級ブランドがブティックを構える。そもそも「クラネ」のようなリアルクローズブランドは、百貨店の上層階に入ることがほとんど。京都高島屋S.C.本館でも、婦人服ブランドの多くが3階に集積している。百貨店のセオリーからすると、「クラネ」が本館1階にショップを出したのはかなり異例であり、高島屋からの期待値の表れともいえる。「(1階への出店は)誰もが知るような世界的なブランドとも競合していると聞いていたから、正直現実的ではないと思っていた」と松本。だが、「選ばれたからには、私たちのブランドがここ(1階)にある意味を作りたい」と気後れしない。

“会社”が納得しないと
商品は店に置かない

オープン初日は1時間ごとの整理入場とし、店の外に特設の整理券配布ゾーンを作った。あらかじめ用意していた400枚の整理券の配布は早々に終了し、終日盛況だった。年齢層は20代から松本と同世代(40歳前後)、それ以上と見られる客がいた。店舗限定・先行販売商品が目当ての来店も多かった。

松本が「エモダ(EMODA)」を手掛けていた頃から15年近くファンだという女性客は、「今日は(松本)恵奈さんに会うために大阪から来た」と興奮気味。京都店限定のサックスブルーの新作シアートップスなど数点を購入した。「クラネ」で初めて買い物をするという24歳の女性客は、ブランド定番のスラックスを買った。「シンプルだけど高級感があるのが気に入った。少し背伸びして買うけれど、大切にはきたい」と話した。

「商品は一つ一つ、私を含めた各セクションのGOサインが出ないと、絶対に店に置かないと決めている」と松本。自身の影響力に頼らず、商品企画のブラッシュアップを地道に進め、「純粋に服としての魅力でお客さまにご支持いただけるようになった」と自信を深める。今や国内のリアルトレンドをけん引するブランドの一つになったが、「ひたすら突き進んできたから、あまりそんな実感がない」という。「でもこうやって店に立ってみると、服のクオリティーも、お客さまとの関係も、確実に前に進んでいると分かる」。

“売れるだけ”じゃ意味がない
業界を驚かせる10周年に

今年の新店オープンは博多阪急(2月28日オープン)に続き2店舗目。博多阪急店も好調にすべり出している。オープン日は開店後に150人以上が行列を作った。3台のレジが常時稼働しながらも会計までに1時間待ちの状態が続き、フロア(4階)における単日の売り上げ記録を更新した。

来年はブランド10周年。「まだ内容は明かせないが、直近でも日本のアパレル業界をあっと驚かせるようなビッグな企画を計画中」という。「新しいことをやるとなれば、スタッフを差し置いて私が一番気張ってしまうし、全ての力をそこに注いでいるような感覚がある。10周年も今から準備が進んでいて、きっとあっという間に迎えると思うが、終えた頃には、ブランドがさらに一回り成長できているはず」。

仕事への原動力について聞くと、「(京都高島屋の店のように)お客さまとスタッフが、こうやって楽しくなれる場を作りたい」というシンプルな答え。「単純な“売れる楽しさ”なら『エモダ』で十分味わわせてもらったから。『クラネ』では長く愛用してもらえる洋服作りとお客さまとの関係性を大切にしながら、服の価値だけじゃない別の楽しさを伝えたい。そのために常に新しい挑戦を続けて、『クラネ』の輪をもっと大きくしていくことだけを考えている」。

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