「ディオール(DIOR)」は、米百貨店大手メイシーズ(MACY'S)のニューヨーク本店が主催する第49回「メイシーズ フラワー ショー(MACY’S FLOWER SHOW)」の協賛パートナーを務め、同店で体験型ポップアップストア「ミス ディオール : フロム フラワー トゥ フレグランス(MISS DIOR: FROM FLOWER TO FRAGRANCE)」を5月12日まで開催中している。「ディオール」が同イベントを協賛するのは昨年に続き2度目となり、フランシス・クルジャン(Francis Kurkdjian)=ディオール パフューム クリエイション ディレクターが初めて手掛けたシグネチャーフレグランス“ミス ディオール”の新作をお披露目した。「ミス ディオール」の世界観に浸れるポップアップを体験してきた。
1946年から続くメイシーズ毎年恒例の「メイシーズ フラワー ショー」は、春の訪れを祝い、フラワーデザイナーによって1階メインフロアやショーウィンドウケースが多種多様な草花で装飾される名物イベントだ。今年は「春の喜び(SPRING DELIGHTS)」をテーマに、赤を基調とした紫陽花、ヒナギク、バラなど50品種以上の計1万6000株もの花や木々が飾り付けられ、新“ミス ディオール”の香りに新たなノートとして追加されたストロベリーのモチーフが随所に取り入れられた。
名香誕生の歴史へ誘う旅の始まり
「ディオール」によるインスタレーションとポップアップスペースは、同館メザニン(中2階)エリアで展開されていた。特設スペースに続く階段を上ると、創設者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)の別荘として知られるラ・コル・ノワール邸の庭園をイメージしたという美しいバラ畑が出迎える。ぜいたくに埋め尽くされたマゼンダピンクのバラは南仏グラースから直送された生花だというから高揚感も高まる。センシュアルな香りに包まれた会場入り口は、写真撮影を楽しむ多くの来場者で賑わっていたのが印象的だった。
“ミス ディオール”は、「ディオール」が47年に発表した初のオートクチュールコレクションとともに誕生したアイコンフレグランスだが、その歴史を語るには、創設者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)の妹、カトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)の存在が欠かせない。インスタレーションの旅の始まりとなる「ボーン・イン・グラース1947」エリアでは、その名の由来になったカトリーヌにフューチャーし、彼女がムッシュ同様にガーデニングや花々をこよなく愛し、一人の女性として力強く生きてきた姿を紹介。第二次世界大戦中にレジスタンス運動に参加したことでナチスに強制収容されたことや、その後南仏グラースに移住し、花の売買で実業家となったフランス初の女性であったこと、そうした妥協ない精神や勇気がムッシュのクリエイションにも影響を与えてきたことなど、数々の写真を通して、名香に息付く兄妹のスピリットや起源に触れることができる展示となっていた。
伝統と革新を融合した現代版“ミス ディオール”の香りとは
「ミス ディオール ギャラリー」では、“ミス ディオール”初の長方形ボトルデザインのスケッチ画(1948年)や当時の広告、1949年春夏オートクチュールで発表されたミス ディオール ドレスの写真などが展示され、3月にローンチした新作の“ミス ディオール パルファン”(日本未発売)、現在発売中の“ミス ディオール ブルーミング ブーケ”(2023年リニューアル)、“ミス ディオール オードゥ パルファン”(21年リニューアル)の3つのフレグランスボトルが登場。過去のアーカイブともに現代の“ミス ディオール”が一堂に会した。
さらに奥のエリアでは、ムエットを提供する赤いボックスが設置され、それぞれの香りを実際にテイスティング。今回クルジャン=ディオール パフューム クリエイション ディレクターが現代的に再解釈した“ミス ディオール パルファン”は、初代のジャスミンの抽出方法をトリビュートしたといい、フローラルとアンバーウッドが重なるシプレーノートにワイルドストロベリー、ピーチ、アプリコットのグルマンノートが加わったことで、優しい甘みと深みのある官能的な香りにアップデートされていた。3つの中で最もインテンスなパルファンであるにも関わらず、非常に軽やかで、香りを嗅いでいるだけで心地の良い幸福感に包まれた。
“ジャドール”に用いられているチュベローズ、ジャスミンサンバック、ソケイと、そして“ミス ディオール パルファン”に用いられているセントフォリアローズ、オレンジフラワーの5つの花が展示されたスペースも心を躍らせた。ボタンを押すと香りが噴射されるエミッターが設置され、アンバサダーを務めるナタリー・ポートマン(Natalie Portman)とクルジャン=ディオール パフューム クリエイション ディレクターがグラースの花畑で花摘みをする映像が流れる中で、それぞれの花の説明と香りを堪能することができた。
希少なグランヴィルローズもNYに直送
プレミアムエイジングケアシリーズ“プレステージ”商品の中核成分として栽培されている、希少なグランヴィルローズが咲き誇る一角も。これもグランヴィルにある自社農園「ディオール ローズ ガーデン」から調達したそうだ。ムッシュとカトリーヌが幼少期を過ごした生家、レ リュンブ邸があったノルマンディー地方グランヴィルの厳しい気候のもと野生で生息するバラをインスピレーション源に、スキンケア開発のために生み出されたグランヴィルローズ。ファッションからビューティまで、“バラ”はメゾンを象徴するシンボルであるが、いかにディオール家の暮らしに根付いてきた存在であったかをあらためて思い知らされた。
他にも、会場では「ディオール」のメイクアップ商品やスキンケア商品をタッチアップできるメイクアップスペースやフォトブースを構え、新商品はもちろん、 “ジャドール”のフレグランス、バス・ボディーケアアイテムから、メンズ香水シリーズ“ソヴァージュ”のフレグランス、スキンケア、グルーミングアイテムまで全商品が購入できるブティック、パーソナライゼーションサービス「My ABC Dior」などもあり、盛りだくさんのコンテンツとなっていた。
さらに、同イベントではAR(拡張現実)テクノロジーを駆使したイマーシブ(没入型)体験も提供。エントランスで配布される専用QRコードを読み取ると、メイシーズの外観が“ミス ディオール”を象徴するセントフォリアローズで埋め尽くされるARエフェクトを楽しむことができる。「メイシーズ フラワー ショー」のウィル・コス(Will Coss)=エグゼクティブ プロデューサーは今回のコラボレートについて、「インタラクティブなグラフィックやディスプレイを通じて、“ミス ディオール”の世界観を再発見できる機会と空間を提供できたことを誇りに思う」と話した。メゾンに脈々と受け継がれてきたクリエイションを振り返りながら、“ミス ディオール”の魅力を全身で感じることができる至極の体験となった。