「M A S U」を運営するソウキ(SOHKI)は、ウィメンズブランド「ムッシャン(MUKCYEN)」を2024-25年秋冬シーズンに立ち上げる。デザイナーはヨウジヤマモトの企画チームで約4年間経験を積んだ木村由佳で、ブランド名「ムッシャン」は“木村”の中国語読みを元にした造語だ。ブランド名には、日本生まれ、中国育ちのデザイナーの「意味のない抽象的な言葉に、今後は意味を与えていきたい」という決意を込めている。
強いデザインと柔らかな素材
デビューシーズンは“荒蕪(こうぶ)”をテーマに、コレクションを通じて生と死の循環を表現したという。包帯を巻いたミイラを想起させるカッティングやベルト使いをはじめ、3種類のウールを複雑に交差させたジャケットや、7本のファスナーを走らせたジャケットなど、脱構築的な強いデザインが特徴だ。カラーリングはベージュ、ホワイト、ブラックといった無彩色中心で、シルエットはボディーコンシャスな提案が多い。しかし素材にガーゼやオーガンジー、ビンテージのサテン、ジャージー、ワッフル、ベビーアルパカなどソフトタッチのものを多用し、「着心地の良さには特にこだわった」と木村デザイナー。デザイナー自身が着たい服をベースに、人体造形に着想した44型をそろえる。重衣料を少な目にし、レイヤード前提のアイテムを充実させた。
価格帯はアウター6万3000〜22万円、トップス2万7000〜5万4000円、ボトムス1万8000〜7万8000円、インナー1万6000〜2万9000円、ベルト1万4000〜6万円など。デザイナーのアイデンティティーをむき出しにしたような手の込んだ構造や加工が多いものの、中国に生産拠点を構えるソウキの強みを生かして、ほとんどのアイテムを10万円以下に抑えている。
デザイナーの個性も武器に
木村デザイナーはSNSでフォロワーを20万以上抱えており、その個性的な世界観も武器の一つだろう。光と闇のムードを紙一重で行き来するクリエイションは、誰もが親しみやすいものではない。しかし、個々のアイテムには機能性も調和しており、手に取れば、口数は多くない木村デザイナーの服を大切にする思いが伝わってくる。
デビューシーズンのセールス担当は、「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」の国内セールスをデビューから担っている六本木八栄エイト・リンク(8LINK)代表取締役だ。六本木代表は「まだコレクションが何も形になっていない段階で彼女と話をし、キャラクターに引かれてすぐにセールスをやると決めた」と語った。
ソウキの陳晨社長は、「市場規模が大きいウィメンズにも挑戦してみたかった。まだまだこれからの段階だが、デザイナーの個性には期待しているし、『M A S U』の妹ブランドとして育てていきたい」と述べた。