PROFILE: 小倉知世/マッシュスタイルラボMD本部エミ担当MD
「どのタイミングで、どんなものを、どれだけ売るのか」を設計し、目標の売り上げ達成と利益の確保に向けてさまざまな部署と連携しながら、ブランド運営に携わるのがMD(マーチャンダイザー)だ。ディレクターやデザイナー(企画)、バイヤー、販売員と比べて露出が少ない職種だが、売り上げや在庫消化の向上のために戦略を立て、状況に合わせて都度調整し、結果を分析しながら次の計画に反映する、重要な役割を担う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年6月10日号から抜粋・加筆しています)
「WWDJAPAN」2024年6月10日号では、そんなMDの仕事を特集する。MDの仕事は、ブランドによってカバーする範囲と注力ポイントが異なると同時に、仕事のやり方、判断の仕方も人によってさまざまだ。そこで今回は、3人のMDの仕事内容とその魅力を紹介する。
1人目は、マッシュ スタイルラボ「エミ(EMMI)」の小倉知世さんだ。「エミ」は品ぞろえのおよそ半分がスニーカーを中心とした買い付け品。残りをオリジナルアパレルが占め、1シーズン(3カ月)に50~80型を展開。利益確保の主軸を担う。アシスタントMDを経て、昨年4月にMDに就任。ディレクター、MD、営業が全て30代女性というフレッシュなメンバーで、来年のブランド誕生10周年という節目に向けて邁進中だ。
MDには「五適」という言葉がある。「適品」「適時」「適所」「適価」「適量」だ。「その『五適』を考えることが好きで、予測した通りに売れた時の達成感こそ醍醐味だ」と小倉知世さんは語る。
学生時代からMDの仕事に就きたいと考えていたといい、昨年秋に念願がかなって「エミ」のオリジナルアパレルのMDに就任した。2024年春夏は、まさに手掛けた商品が、策定した販売計画に基づき展開されている初めてのシーズンだ。「商品も売り方も意図した通りになるとは限らないし、そもそも私の予測自体が間違っていることもある。毎週、毎月、毎シーズンが気づきと反省の連続だが、それを次に生かせるからこそ、楽しい」と生き生きと語る。
「エミ」の場合、シーズンのキックオフはMDによる展示会マップの提案から始まる。年4回の展示会に合わせ、およそ3カ月分の投入アイテムを価格と数量も含めて週ごとに記載。コーディネートイメージもついている。これを意図と共にディレクターを含む企画チーム(7人)に説明する。「前年をベースに、前回の反省点や他社の売れ筋などを踏まえながら、MDとして絶対に外せないと考えるアイテムも明確にする」。
これを骨格として、企画チームがアイデアを出し、肉付けしていくイメージだ。「企画のアイデアや熱意を反映しながら、マップをブラッシュアップする」。
展示会マップが完成すると、企画チームのトップであるディレクターの指揮のもと、サンプル作りに入る。“MDとして絶対に外せない”アイテムをメインに、都度アイテムがマップから大きく外れていないかを確認し、調整が必要になれば随時マップの修正を行う。
編集者なども呼ぶ展示会で、社内外のさまざまな意見を聞きつつ、直営店と全チャネルを取りまとめて発注数を決める。「そもそも私が作ったマップに則っている商品なので、『売れるか、売れないか』を考えるのではなく、『こういう風に売ろう!』と考えて数量を決めていく」。
そこから展開週ごとの商品投入マップを作成。実際の品番と写真と発注数が入っており、これが販売計画になる。しかし、商品が全て納期通りに到着するとは限らない。また、その時の状況に応じて、商品の投入を前倒したり、後ろ倒したりの調整が必要だ。それを毎週または隔週で行う入荷会議で、営業や生産担当、店舗への振り分けを担当するディストリビューターなどと共に調整をかけていく。「直近の在庫も鑑みながら、予算達成可能な状況かどうかを確認し、随時できる調整を行う」。
最終的にマークダウンの品番や値下げ率のプランも策定する。「定められた目標の消化率に達成するようにシミュレーションして、リスト化する。セールにかける約1カ月前に皆に共有し、最後に売るチャンスを逃さないように意識付けする」。
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