PROFILE: シャルルアンリ・ルヴァイヤン/メイクアップフォーエバー社長兼最高経営責任者
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(以下、LVMH)傘下でパリ生まれのプロフェッショナル・メイクアップブランド「メイクアップフォーエバー(MAKE UP FOR EVER)」は今年、ブランド設立40周年を迎える。映画やテレビ、舞台、ファッションショーなどのバックステージを支えるメイクアップ用品を数多く開発し続け、現在は一般消費者のファンを世界中で増やしている。日本では昨年末、エリア初の店舗を渋谷スクランブルスクエアにオープンした。前職で「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のチーフ・デジタル・オフィサーを務め、昨年3月にグローバルの社長兼最高経営責任者(CEO)に就任したシャルルアンリ・ルヴァイヤン(Charles-Henri Levaillant)氏が描くブランドの未来とは?
中東ではNO.1メイクアップブランド
WWD:直近はラグジュアリーファッションの世界に身を置き、ビューティブランドは自身にとって新たな領域だが印象は?
シャルルアンリ・ルヴァイヤン=メイクアップフォーエバー社長兼CEO(以下、ルヴァイヤン):化粧品業界は私にとって全く新しいビジネス分野で、化粧品業界の速いスピード感にワクワクしている。メイクアップは高い技術を必要とする世界であると同時に大変芸術的なもので、私はこの分野が大好きだ。
WWD:4年前にベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOから直々に誘われたということだが、期待されているミッションは?
ルヴァイヤン:メイクアップに置いて世界のトップブランドの一つになることを目標に掲げている。中東ではすでにNo.1のメイクアップブランドなので、野心的ではあるが現実的とも言える。時間はかかるかもしれないが、一旦軌道に乗ってしまえばわれわれが考えているよりずっと早く素晴らしい結果を出せるだろう。
WWD:「メイクアップフォーエバー」の競争力とは?
ルヴァイヤン:先ほど申し上げた通り、メイクアップは高度な技術を要する非常に芸術的なものだ。われわれはその両方を高いレベルでマスターしている。「メイクアップフォーエバー」はイノベーションを原動力とするブランドで、商品は最高のパフォーマンスを保証するために全ての商品をプロのメイクアップアーティストたちと共同開発している。同時に、われわれには大胆なコミュニケーションと芸術性がある。生まれながらのアーティストであり、40年の伝統がある。上海とパリにある2つのアカデミーは、私たちの教育への情熱を示すユニークな拠点だ。
競争の激しいメイクアップ業界で
勝者の条件は革新性、マルチカテゴリー、個性
WWD:ブランドの成長戦略をどのように描くか?
ルヴァイヤン:メイクアップ業界は厳しい世界だ。ビューティ業界で最も競争が激しく、スピードが速く、革新的な業界の1つでもある。業界における世界的な競争に勝つブランドは、革新的で、複数のカテゴリーにまたがり、明確な個性を持っていると考えている。だからこそわれわれの戦略は、市場に強力なイノベーションを提供し、メイクアップがアートであることを再確認することに基づいている。「メイクアップフォーエバー」は最もパフォーマンス性の高いアーティスティックブランドを目指している。「メイクアップフォーエバー」は40年に渡りメイクアップ業界に貢献してきており、これからもずっとそうしていくつもりだ。「メイクアップフォーエバー」はファッションブランドでもセレブリティーブランドでもない。高いパフォーマンスと洗練された芸術性に焦点を当てた長期的なブランドだ。
WWD:具体的に実行することは。
ルヴァイヤン:これまで以上にプロとしてのアイデンティティーを研ぎ澄まし、革新的な処方を追求し続ける必要がある。多くの人が「メイクアップフォーエバー」はプロ用だから使うのが難しいと思っているが、実際はプロが愛用する商品だからこそ最も使いやすく、最もユーザーフレンドリーであることを示すべきだ。われわれが何を目指しているかをより大きなスケールで表現したいと思っている。
ローカライズとフランスらしさの両立を目指して
WWD:ブランドにとって日本市場の位置付けは?
ルヴァイヤン:日本で小売り市場に参入してから歴史が浅いため、他国と比べるとまだシェアが高いとは言えないが、日本市場はレベルが高く、洗練されているので重視している。「メイクアップフォーエバー」は、以前はプロフェッショナル向けとして展開していたが、一般市場でさらに発展する大きな可能性を持っている。そのためには長期的な視野に立ち、自分たちが何者であるか、何を目指しているかをもっと表現していく必要がある。パフォーマンス、芸術性、教育、伝達、パーソナリティーの解放。逆説的に聞こえるかもしれないが、日本にローカライズすることを受け入れると同時に、「メイクアップフォーエバー」のフランスらしさをもっと表現する必要があるとも思う。
WWD「ルイ・ヴィトン」での経験から「メイクアップフォーエバー」の成長に生かせる知見はあるか。
ルヴァイヤン:「メイクアップフォーエバー」には非常に機能性の高い商品がそろっている。しかし、性能だけでは売れないのも事実だ。「ルイ・ヴィトン」での経験から、人々は魅力的で自分が強く欲しいと望むものを買うのであり、性能は安心感を与えるものでしかないということを学んだ。だからわれわれは「メイクアップフォーエバー」を非常に魅力的なブランドに変える必要がある。これは長期的な課題であり、多くの小さな行動から始まる。例えば、「メイクアップフォーエバー」の高機能なメイクブラシにフィーチャーして、日本のアーティストたちと芸樹的なコラボレーションをするというアイデアはどうか?こうした新しい視点でさまざまな仕掛けづくりをしていきたい。