「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」の山縣良和デザイナーが主宰するファッションの私塾「ここのがっこう」は、2023年度受講生による作品展覧会「cocono gacco exhibition 2024 in Fujiyoshida」を開催する。山梨県富士吉田市内を会場とし、期間は4月13日から21日まで。同展覧会は21年4月に始まり、今回が4回目となる。
個性あふれる展示の数々
デザイナーとして活躍する卒業生の姿も
山縣デザイナーいわく、このような展示の場を設ける意図として、(1) 学生のうちから空間展示やインスタレーションの経験を積む、(2)学生が職人や産地との関わりをもつ、(3) 学生の作品をゲストに見せる機会をつくる、の3点があるという。富士吉田市は古くより織物の街として栄え、現在も高度な技術を持った職人が集まると世界的に評価される地域だ。
初日にはメディア関係者向けに、オープニング審査会を開催。数時間かけて市内に点在する6つの展覧会場を巡回し、在廊する学生と話したり、ワークショップに参加したりしながら作品に対する理解を深めた。「ピリングス(PILLINGS)」を手掛ける村上亮太デザイナーや、「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」の吉田圭佑デザイナーら、「ここのがっこう」卒業生が往訪し、作品を鑑賞する姿も見られた。
学生は、もともと服作りを専門で学んだ経験のある人からそうでない人までおり、バックグラウンドはさまざまだ。一般の大学を卒業し、普段は広告代理店で勤務するKENTYさんは、「多動と過集中傾向がある」という自身の特性を、絵画と洋服に落とし込んだ。「服作りを始めて1年が経つが、色々な人に作品を見てもらうのはこれが初めての機会。来場者からフィードバックをもらうなど、コミュニケーションを楽しみたい」と話す。また、アパレル企業のニットデザイナーである河又明日香さんは、はがれた皮膚を「かわいい」と感じた幼少期の原体験から、肌に直接触れるアイテムであるメイク用パフなどを、ポンチョやベストとして編み上げた。「自分が『楽しくて幸せ』と心から感じて作っているものについて、来場者の皆さまに思いを伝えられるように頑張りたい」と意気込みを見せた。
山縣デザイナーらによるトークセッションも
富士吉田で展覧会を行う意義とは
初日のラストを飾ったのは、山縣デザイナーと「ここのがっこう」で講師を務める家安香デザインディレクター、五十嵐哲也=富士技術支援センター繊維技術部主幹研究員の3人によるトークセッション。富士吉田市が展覧会会場となる意義について、五十嵐研究員は「これまでは誰も使用していなかった建物が展示会場になることで、街の人たちが『ここはまだ使える』と気づくきっかけになっている。去年は展示に使えたのに今年は空いていない場所もあり、街の変容が起きている」と好影響を指摘した。家安デザインディレクターも、「桜の名所でもある富士吉田は、特に海外観光客にとって人気のスポット。学生の作品が観光客に見られることで、観光地としてのアップデートにもつながるのではないか」と話した。
山縣デザイナーは、「回数を重ねるごとに、学生の作品がパワーアップしており、パフォーミングアートなどの新たな表現も生まれている。『全て見て回るには時間が足りないから宿泊施設がほしい』との声もあり、今後の展示環境をさらに整えていきたい」とコメントした。
■coconogacco exhibition 2024 in Fujiyoshida
期間:4月13〜21日
時間:11〜17時(ただし21日は11〜15時)
場所:
FUJIHIMURO
山梨県富士吉田市富士見1-1-5
旧ニコル喫茶店
山梨県富士吉田市下吉田2-1-32
洋装のつちや・隣
山梨県富士吉田市下吉田3-12-18
一品堂書店・隣
山梨県富士吉田市下吉田2-2-26
旧糸屋
山梨県富士吉田市下吉田2-2-8
旧山叶
山梨県富士吉田市下吉田2-16-19