ルミネは4月17日、JR新宿駅構内に飲食を中心とした商業施設「イイトルミネ(EATo LUMINE)」をオープンした。出店テナント数は28店舗で、そのうち実に22店舗がルミネ初出店。とはいえ女性に強いルミネらしく、「トレンドグルメ」を軸に「タイパ(タイムパフォーマンス)」や「ウェルパ(ウェルネスパフォーマンス)」といったキーワードを散りばめ、人気・実力ともに高いスイーツやフード、コスメ店舗を導入した。1681駅を展開するJR東日本でも最大の1日80万人近い乗客数を誇る新宿駅で、ライフスタイルを切り口にした狙いは何か。JR東日本時代には東京駅の「グランスタ」開発やスーパー紀伊國屋のM&Aなどを手掛けてきたルミネの表輝幸社長に聞いた。
表輝幸/ルミネ社長(中央) プロフィール
(おもて・てるゆき)早稲田大学大学院理工学研究科を修了し、同年にJR東日本に入社。ホテル、住宅、新規事業開発などに従事し、2000年日本レストラン調理センター社長にグループ最年少で就任。その後高級スーパーの紀ノ國屋のM&A、東京駅グランスタ開発などを手掛け、11年からルミネ常務取締役、専務取締役を経て、16年にJR東日本の執行役員、21年から常務執行役員、23年6月から現職
WWD:テナント構成の狙いは?
表輝幸ルミネ社長(以下、表):駅ナカなので当然「タイパ」に優れつつ、毎日来ていただいても楽しさを提供できる「トレンドグルメ」を打ち出し、かつウェルネスや健康にも配慮した「ウェルパ」も取り入れた。ルミネは20〜30代の女性が中心顧客層だが、「イイトルミネ」はより幅広い客層を想定しており、インバウンドやお土産といった要素も取り入れている。特にお土産やお持たせは、日本ならではの考え方で、「イイトルミネ」発の”お土産”や”グルメ”を生み出したい。
WWD:MDは「トレンドグルメ」「ウェルパ」といったルミネの持ち味であるライフスタイルを切り口にした。「駅弁」といったすでに東京駅で大成功を収めているモノ軸でも良かったのでは?
表:駅や地域によってしっかり個性を打ち出していくべきだ。東京駅には東京駅の、新宿駅には新宿駅の個性があるべきで、その意味では新宿駅といえば、ルミネであり、ルミネらしさとは、毎日の生活を楽しくするライフスタイルが切り口になる。
WWD:ルミネにとっても、ここまで本格的な飲食は初めて。今後の成功の可否を握るのは?
表:やはり仮説を検証しつつ、ニーズに沿って修正していく変化対応だろう。これはもちろん既存のルミネでも最も重視していることだが、「イイトルミネ」はさらにスピードが要求される。ファッションのトレンドも相当なスピードだが、「イイトルミネ」は毎日訪れるお客さまを想定している。毎日来てもなにか新しい発見やコト・モノが要求されている。その意味ではファッション以上にスピード感のある商品開発や仕掛けが必要になる。
WWD:相乗効果への期待は?
表:もちろん大いにある。ルミネの強みは、掛け算であり、今回はウェルネスやタイパといったキーワードを掛け合わせることで、新商品や新業態の開発にもつながった。「イイトルミネ」で得たノウハウやテナントとのつながりは、他のルミネ店舗にも今後どんどん生かしていく。
WWD:2月13日から、JR東日本グループのJREポイントの連携がスタートした。そのメリットは?
表:新規顧客の開拓の面で、かなり強力な武器になる。ルミネカードは既存の顧客にかなり活用してもらっているが、20〜30代の女性が中心で、その起点もクレジットカードになる。一方でZ世代以下のクレカを持っていなかったり、クレカよりも電子決済やバーコード決済を使う層やシーンは着実に増えている。JREポイントと連携することで、若年層や男性などの新規のユーザー層を掘り起こし、獲得することが可能になる。