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東京レインボープライドに連続参加「ジバンシイ」は社長のマイノリティーとしての過去からD&I推進

認定NPO法人の東京レインボープライドは4月20、21日、「東京レインボープライド2024(TOKYO RAINBOW PRIDE 2024以下、TRP)」を代々木公園で開催した。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON JAPAN以下、LVMHジャパン)は同イベントに企業として初めて協賛し、同社のカルチャーやブランドの歴史、ダイバーシティー&インクルージョン(以下、D&I)の取り組みを紹介するブースを出展。傘下の「パルファム ジバンシイ(PARFUMS GIVENCHY)」は2年連続で出展し、メイクアップのタッチアップサービスやサンプル商品の配布のほか、TRPのために作ったレインボーカラーのロゴステッカーをプレゼントした。

「パルファム ジバンシイ」を率いる金山桃LVMHフレグランスブランズジェネラル マネージャー兼社長は日本で生まれた後、5歳でパリへ移住し、自身がマイノリティーであることを意識しながら育ったそう。こうしたバックグラウンドから、TRPの参加にも積極的だ。金山社長が目指すD&Iな企業とは?

PROFILE: 金山桃/LVMHフレグランスブランズ ジェネラル マネージャー兼社長

金山桃/LVMHフレグランスブランズ ジェネラル マネージャー兼社長
PROFILE: (かなやま・もも)5歳でフランス・パリへ移住。ESSECビジネススクール卒業。2009年LVMHグループ会社のセフォラ、10年ロレアルに入社。18年に帰国し、日本ロレアルを経て22年2月にLVMHジャパンに入社。同年5月、LVMHフレグランスブランズに入社し現職

WWDJAPAN(以下、WWD):改めて、TRPに参加した経緯は?

金山桃LVMHフレグランスブランズ ジェネラル マネージャー兼社長(以下、金山):22年に現職に就任した当時から、D&Iを強く意識したCSR(企業の社会的責任)ストラテジーを構築し、ブランドスビジネスとのシナジーを生み出すことを目指している。D&Iに関して特に日本では、LGBTQ+の基本的な権利や、それぞれがどのような人たちであるかの理解さえ、ほかの国々と比べて遅れていると感じていた。「パルファム ジバンシイ」として、日本の社会の前進に貢献したいという思いからTRPへの出展を決めた。

WWD:参加する意義をどう捉えている?

金山:TRPの参加は、始まりにすぎない。“LGBTQ+コミュニティーをサポートしている”というメッセージを公的に出すことは、“今後もLGBTQ+に関わる問題の解決に尽力していく”という決意表明でもあるから。

WWD:昨年の出展について、社員や顧客の反応は?

金山: 昨年のTRPには主にオフィススタッフが参加した。新たな才能を発揮した社員もいたし、全社員にとって新鮮で学びの多い経験になった。代々木公園のブースには、百貨店のカウンターには足を運びづらいという若者や男性含め、多様な人々が訪れた。TRPでの取り組みを見て、採用に応募してくれた人もいた。会社としてD&Iに真剣に取り組むことで、若い世代の共感を確実に得ているように感じる。

履歴書から性別欄や写真の添付を廃止

WWD:“恐れずに改革する(DARE TO REINVENT)”というスローガンを掲げ、どのような施策を行なっている?

金山:23年には認定NPO法人のりびっと(REBIT)と協業し、美容部員の定期的なトレーニングを開始した。例えば、男性がカウンターを訪れた際、「女性へのプレゼントですか?」と聞かないなどを学んでいる。D&Iの価値観がすれ違いやすい年配の社員含め、全員が啓発されるトレーニングを考えている。

WWD:社内の多様性を高めるための取り組みは?

金山:22年には履歴書から性別や婚姻状況、生年月日の欄を無くし、写真の添付も廃止した。応募する側の心理的不安を減らし、多様性を発揮して自分らしく働ける職場にしたい。インターンシップや再雇用、多国籍の採用なども始めた。もちろん“多様性”といっても、“何でも許容する”という意味ではない。「パルファム ジバンシイ」はエレガントなブランド。ブランドを長期的に継承するためにはイメージを守る必要があるので、バランスに留意しつつ、多様性を受け入れるインクルーシブな企業を目指している。

「5歳でパリへ移住し、白人ばかりの地区で唯一のアジア人として育った」

WWD:マイノリティーの一人として育ったバックグラウンドをどう振り返る?

金山:日本で生まれた後、5歳でパリへ移住した。白人ばかりの地区で唯一のアジア人として、肌の色はもちろん宗教や言語面でも、自身がマイノリティーであることを意識しながら育った。“自分がなぜここにいるのか”を常に正当化する必要があった。日本とフランス、2つの文化の中で成長した経験をポジティブに捉えられるようになったのは、帰国した18年以降。幼少期から多様な文化の中で教育を受けたことで、視野が広がり、自然とグローバルな感覚が備わった。

WWD:帰国後の経験は?

金山:日本に拠点を移した後も、まだ自分がマイノリティーであると感じている。7歳の娘がいるが、私は日本語の読み書きができないので、彼女の日本語の質問に答えられない。また、私が入社した当時、女性のジェネラル・マネジャーはLVMHジャパンでさえ少なかった。ビューティの中でもまだ数少ない。さらにグループ外から、かつラグジュアリーブランドの経験がないまま入社したので、孤独だった。こういった背景からも、D&Iは非常に重要だと考える。

WWD:今後の展望は?

金山:「パルファム ジバンシイ」は名前ばかりが大きくて、ビジネスのサイズはまだ小さい。これまでにやってきたことを続けていても成長できないので、多様な人材を雇用し、新たな挑戦を続けている。時には失敗をすることもあるけれど、挑戦を続けることが重要。その先に成功があるはずだ。

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