
生活者や小売り関係者から聞かれたのは、韓国コスメの勢い。マーケティングや商品力の高さから、若年層だけではなく、その上の世代の愛用者も急増している。その求心力の秘密とは何か。2016年に韓国の人気ユーチューバーがプロデュースして人気ブランドになった「ロムアンド(ROM&ND)」や、21年に誕生して以来ヒット商品が続く「バイユア(BYUR)」など、20年以降の「第4次韓流ブーム」の機運に乗じたコスメブランドに、その戦略や工夫を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年4月22日号付録「WWDBEAUTY」からの抜粋です)
韓国ブランド輸入額は前年比35%増の成長
シェアでは24%を記録
菅野沙織/日本輸入化粧品協会 理事長
中価格帯メイクは、百貨店ブランドの優れた品質と、低価格帯ブランドの面白さや新しさ、優れた機能性の両方を兼ね備えた“いいとこ取り”をすることで、中価格帯ならではのブランドバリューを高める必要がある。「百貨店ブランドよりは手が届きやすいから売れるだろう」という甘い考えでは、ブランド価値を毀損する。
そう考えると、中価格帯ブランドの競合は“他の中価格帯ブランド”ではない。百貨店ブランドから低価格帯ブランドまでの全てがライバルで、その双方の魅力を持っていることを明確に表現することが中価格帯の中で勝ち抜く秘訣だと考える。そんな強烈な自己プレゼンが必要であり、それがブランディングの強化にもつながるだろう。
日本化粧品協会によると、カラー&ベースメイクにおける輸入額は、2020年に韓国がフランスを抜き1位に躍り出た。韓国ブランドは自己プレゼンに秀でており、国際美容展示会「コスモプロフ(COSMOPROF)」でも、最多数のブースを出店している。五感で生活者をワクワクさせるような斬新な商品が多く、その存在感は圧倒的だ。
国別メイクアップ化粧品類輸入額
「バイユア(BYUR)」
ベースメイクが
前年比700%増と成長
韓国メイクブランドが好調の理由は?
「開発スピードの早さや品質と価格のバランス、デザインやブランドの最新性など複数の要素がある。さらにZ世代が中心だった購買層が、品質や信頼の高まりとともにF2層まで広がったため」(亀山彩菜マーケティング部マネージャー)。
自社ブランドの売れ行きは?
「ベースメイク、スキンケアともに大きく成長。ベースメイクは前年比700%増、スキンケアは前年比500%増だった。SNSのメディア別コンテンツ配信やフォロワーとの双方向コミュニケーションも大切に考えている」。
「ロムアンド(ROM&ND)」
ブランド全体で
前年比70%増の伸長
韓国メイクブランドが好調の理由は?
「日本のメイクブランドは、半期ごと(春夏/秋冬)の発売サイクルに合わせて1~2年前から新商品を計画。一方、韓国ブランドはそれより圧倒的に早いスピードで商品化しており、移り変わりの激しい時代にキャッチアップできていると考えている」(浅野正晴 営業担当)。
自社ブランドの売れ行きは?
「全体は前年比70%増の伸長だった。リップやアイブロウの売れ行きが好調で、中でもリップバームの“グラスティングメルティングバーム”はファンも多い」。
「ミシャ(MISSHA)」
TWICE SANAのビジュアルで
ファンをけん引
韓国メイクブランドが好調の理由は?
「韓国のアイドルやインフルエンサーの人気・憧れが韓国ブランドの人気を底上げしている。また、韓国ブランド独自の発色や質感が日本人にとっては新鮮であることも好調な理由と考える」(川合裕希PR担当)。
自社ブランドの売れ行きは?
「クッションファンデーションはリピーターが多く、それとともに化粧下地も伸長している。韓国コスメではあるが、商品によっては日本独自のカラー展開などを行うことで、日本人にマッチするようなブランド展開をしている」。
「ラカ(LAKA)」
「K-POPアイドルの
唇になれる」と火が付く
韓国メイクブランドが好調の理由は?
「例えば、グリッターが日本のブランドではあまり見られない大粒サイズなど、商品自体のクオリティーの高さだけではなく、その独自性も好調の要因だと考える」(山畑七海PR担当)。
自社ブランドの売れ行きは?
「リップアイテムがベストセラー。全22色、全16色などカラーバリエーションの豊富さから、複数色を購入されるお客さまも多数。2023年4月にはオフラインでの展開をスタートし、店頭で手に取って試せるようになったことも好調の要因。店頭でのプロモーションも積極的に行っている」。