LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は4月18日、年次株主総会を開催した。同会では、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)の次男であるアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)=ティファニー プロダクトおよびコミュニケーション部門 エグゼクティブ・バイス・プレジデントと、三男であるフレデリック・アルノー(Frederic Arnault)LVMHウオッチ部門CEOが取締役会のメンバーに推薦され、賛成多数で承認された。
長女のデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=クリスチャン ディオール クチュール会長兼CEOと、長男のアントワン・アルノー(Antoine Arnault)LVMHヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、すでに取締役会に所属している。また、四男で末っ子のジャン・アルノー(Jean Arnault)=ルイ・ヴィトン ウォッチ部門 マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクターも、いずれは取締役会に加わると予想される。
LVMHは近年、一族支配を強化している。22年5月には、当時73歳だったアルノーLVMH会長兼CEOが80歳まで続投できるよう、CEO職は75歳までと定められていた内規を変更。22年12月には、アントワンが一族の持株会社クリスチャン ディオールSE(CHRISTIAN DIOR SE)のCEO兼副会長に就任した。クリスチャン ディオールSEは、一族の主要な持株会社フィナンシエール・アガシュ(FINANCIERE AGACHE)の傘下。フィナンシエール・アガシュは22年12月の時点でクリスチャン ディオールSEの株式資本の97.5%を保有している。これらを通じ、アルノー家は23年12月の時点で、LVMHの株式資本の48.6%と議決権の64.3%を保有している。
アルノーLVMH会長兼CEOは総会後の会見で、「事業の成長には長期的な目線が重要であり、家族経営はそれを可能にする。現在、全てがうまく行っており、株価も上昇しているが、大切なのは傘下ブランドが10年後も今と同様に、もしくは今以上に魅力的で、顧客を引き付けるものであるようにすることだ」と語った。
アルノー会長の側近も異動
同氏には長年の側近が多いが、今回の総会では、その一人であるアントニオ・ベローニ(Antonio Belloni)LVMHグループ マネージング・ディレクターの退任を発表。現在69歳で、アルノー会長兼CEOの右腕として23年にわたって要職を歴任し、執行委員会の会長も務めていた。取締役会からも離れるが、今後はアルノー会長兼CEOの戦略アドバイザーを務めるほか、LVMHイタリアの社長に就任する。
後任には、宝飾ブランドなどを統括するステファン・ビアンキ(Stephane Bianchi)CEOを任命。今後はLVMHグループのジェネラル・マネージャーとして、執行委員会の会長も務める。同氏は現在59歳。18年にLVMHに加わり、ウオッチ部門や傘下のタグ・ホイヤー(TAG HEUER)のCEOなどを務めていた。
減収でも株価が上昇した理由とは?
LVMHは16日に、24年1〜3月期(第1四半期)決算を発表。売上高は前年同期比1.6%減(現地通貨ベースでは同3%増)の206億9400万ユーロ(約3兆3938億円)だった。為替差損のほか、コロナ禍後の爆発的な需要増に支えられていたラグジュアリー消費の“正常化”が響いた結果だが、17日の株価は前日比2.8%高の804ユーロ(約13万1856円)と上昇。アナリストらは、高い実績や盤石な経営体制を持つ同社であれば、悪化する経済環境の中でも競合よりうまく舵取りをしていくだろう、という信頼感が株価上昇につながったと分析している。
なお、アルノー会長兼CEOは会見の際、長女のデルフィーヌと共に訪日したばかりだと話した。地域別の売上高で日本は32%増(現地通貨ベース)と非常に好調だったが、それを裏付けるように、「セリーヌ(CELINE)」など傘下ブランドの店舗で行列を目撃したという。