「イケア(IKEA)」は、日本人アーティスト・高橋理子とコラボレーションした限定コレクション“ソートロン”を、本日から全国の「イケア」店舗、オンラインストアで発売する。商品ラインアップはベッドリネンやブランケットのほか、アロマキャンドル、折り畳み傘、グラス、テーブルクロスなど、全17種だ。
PROFILE: 高橋理子/アーティスト、武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科教授
4月23日にウィズ原宿で開催した発表会では、カーリン・グスタフソン(Karin Gustavsson)「イケア」スウェーデン レンジアイデンティティー・リーダーと高橋がトークセッションを開催。2人に同コラボレーションの経緯やデザインのストーリーを聞いた。
WWD:「イケア」からコラボレーションの依頼が来た時の感想は?
高橋理子(以下、高橋):コロナ禍ということもあり、依頼のメールにしばらく気づかず…メールを見た瞬間にとてもおどろいた。学生の時に半年間パリで活動していたが、当時住んでいたアーティストレジデンスに置いてあったものが全て「イケア」だった。当時はまだ日本に上陸していなかったことから、「このブランドはいったい何だろう?」と気になっていて、今では私も「イケア」のヘビーユーザーだ。どんなブランドで、どんな商品を作ってきたかを理解できているからこそ、意義のあるコラボレーションになった。
カーリン・グスタフソン「イケア」スウェーデン レンジアイデンティティー・リーダー(以下、カーリン):日本にはさまざまなデザインスタイルがある中で、理子の作品を見た時に彼女のコンテンポラリーなデザイン美学に心を動かされた。また、彼女が基礎からデザインを学び、学校で講師を務めていた背景から、そのクラフツマンシップを強く感じた。彼女がイタリアの巨匠、エンツォ・マーリ(Enzo Mari)に認められたことも納得だ。
WWD:限定コレクション“ソートロン”の商品で、それぞれが一番気に入っているものは?
高橋:ブランケットとキッチンクロスがジャガード織になっていて、風合いもよく、裏表のデザインを楽しめる。ぜひ手に取ってほしい。どんな国でも、どんな時代でも受け入れられている円と線から生まれた柄だからこそ、流行りに左右されず使ってもらえるだろう。
カーリン:私はベッドリネンが気に入っている。品質も良いし、ピンクのタグがついている部分にも理子らしさが表現されていると思う。そしてキャンドルの香りにもこだわった。日本の香りをモダンな形で表現したいと思ったので、たくさんのサンプルを作り、理子に送って相談した。限られた住空間の中に、キャンドルやグラスなど、小さくても気分が上がる物が1つでもあると人々の生活も豊かになるはず。ギフトにするのもおすすめだ。
高橋:キャンドルのジャーの形についても深く相談した。単に柄を貼り付けるだけのコラボレーションはしたくなかったし、「イケア」らしい物作りの真髄が引き出せるよう、妥協はせずに望んだ。
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WWD:デザイン制作にあたり、特に意識したことは?
高橋:カーリンが「あなたらしく、いつも通りやってほしい」と言ってくれたこともあり、私自身もリラックスしてプロジェクトに望めた。“東京らしさ”を出すことも“ソートロン”コレクションの中で重要なポイントではあったが、東京で生まれ育った私だからこそ、自然体で望むことで“東京らしさ”も表現できたと思う。
WWD:「イケア」が日本文化をコンセプトに取り入れたことをどのように受け止めている?
高橋:通ずる部分があるとはいえ、日本と北欧では文化は全く違うもの。それにもかかわらず日本を注目し、私を見つけてくれたことに感謝している。私の作品を構成する円と線は、とてもシンプルな幾何形態であり、国や性別を超えて受け入れられるもの。その中で私自身も“世界平和”というビジョンを持ち、表現したいと思っている。そして「イケア」は人々の生活を豊かにするブランドとして世界中で知られているからこそ、私の思いを彼らの商品に乗せて伝えることができると考えている。
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モダンな北欧のデザインと日本のデザイン美学の共通点を探るべく誕生した“ソートロン”コレクションは、「イケア」が掲げる「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンと、「有限から無限の可能性を引き出す」ことをコンセプトに円と直線の要素のみで構成される高橋の作品が深く共鳴し生まれた。同コレクションは世界の「イケア」各店舗で先行発売しており、一部店舗ではすでに完売しているという。