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ニッチ・フレグランスの先駆者「ザ ディファレント カンパニー」社長が語る最高の原料と調香師が引き出すエモーション

PROFILE: フランス・パリ生まれ。パリ政治学院卒業、パリ経営大学院とソルボンヌ大学で、金融、経済、法学の修士修了。銀行員やマッキンゼーの戦略コンサルタントとして活躍後、企業経営に携わる。2000年にジャン・クロード・エレナやティエリー・バシュマコフと共に「ザ ディファレント カンパニー」を設立。22年から「チュリガン パリ」を手掛ける

フランス発「ザ ディファレント カンパニー(THE DIFFERENT COMPANY)」(以下、TDC)のルック・ガブリエル社長兼アートディレクターが来日した。同ブランドは2000年に誕生。同ブランドは、ジャン・クロード・エレナと娘のセリーヌ・エレナをはじめとする世界的な調香師が香りを手掛けるニッチ・フレグランスの先駆者的な存在だ。日本でも爆発的にヒットした金木犀の香りをいち早く紹介したり、革新的なノートの組み合わせの香りを提案したり、独自のアプローチで業界をリードしている。日本では、エストネーションやノーズショップなどが販売。ガブリエル社長に、ブランドや香水業界について聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

ルック・ガブリエル「ザ ディファレント カンパニー」社長兼アートディレクター(以下、ガブリエル):新作“レッド バーニング ナイト”のローンチのために来日した。日本で世界に先駆け先行販売する。

WWD:香水ブランドを立ち上げたきっかけは?

ガブリエル:幼少の頃、母親が香水製造所を運営していた。だから、子どもの頃から、香りに囲まれて育った。香水は、人間の感覚に訴える力があり、新しい世界観を与えてくれるものだ。キッチンで香りを嗅ぐと、どのような料理か想像する。そのように、香りによりイメージが引き出されて、気持ちが豊かになる。偶然「TDC」を立ち上げようとしていた人々と出会い、香水の道に入った。

WWD:「TDC」のブランドコンセプトは?

ガブリエル:創業時から変わらない。世界中で最高の原料と調香師のマッチングにより他ブランドとは違うフレグランスを提案している。創業当時はニッチ・フレグランスはなかった。1990年代の終わり頃は、コマーシャルなものばかり。ラグジュアリーもなければ、ニッチもなかった。そんな中で、フラストレーションが溜まり、高品質なニッチフレグランスを作りたいと思った。「TDC」を着けることで、特別なエモーションを弾きたす、そんな香水を作りたかった。

調香師とはエモーションを引き出す錬金術師

WWD :他のニッチフレグランスブランドと違う点は?

ガブリエル:フランスの香水の良さ引き出しながら、ブランドのシグニチャーの追求をしている。エレガンスと喜びを消費者に与えることが最も大切だと考える。フランスらしさを大切に、香りの成分で冒険をすることもある。金木犀の香りは創業当時に既に紹介した。アニマルノートとフローラルノートの組み合わせやソルティーノートを考えたのはわれわれが最初だ。とにかく、最高の原料成分をクリエイションに注ぎ込むことで、素晴らしい効果が生まれる。

WWD:調香師はどのように選ぶか?

ガブリエル:感覚を大切にしている。調香師とは、化学者ではなく錬金術師でなくてはならない。真の調香師には、香りを通してエモーションを引き出し、感動させる力がある。香水をアートに昇華させる力がなくてはならない。共通の言語を通して、意思疎通を取り、一つの香りを作り上げる。

Z世代がけん引する新しい香りのトレンド

WWD:何種類の香りを販売しているか?ベストセラーは?

ガブリエル:22~23の香り。香りのトレンドは変化する。2005年頃は金木犀がベストセラーで08年頃は、シプレフローラルの“スプリーム バルキス”、今は、グルマン系のバニラが香る“マジャイナシン”が人気。人の好みとともにベストセラーは変化する。だから、以前廃盤にした香水をリバイバルすることもある。

WWD:現在何カ国、何店舗で販売しているか?トップ3の市場は?

ガブリエル:約40カ国、500店舗で販売している。重要な市場は、中東、ロシア、アジア。フランスの香水であることと、ミニマルでピュアなイメージが好まれている。

WWD:本国のフランス市場は?

ガブリエル:フランスは、伝統が重要視されるので、ニッチフレグランスにとっては小さな市場だ。イタリアにはニッチフレグランスを販売している店舗が200程度あるが、フランスでは、たった15店舗くらい。だが、フランスでもここ最近変化が起こっている。Z世代がニッチフレグランスに興味を持ちはじめた。先入観がなく、新しい視点で香水を選ぶ傾向にある。ユニセックスで力強い香りが好まれ、グルマンやウッディな香りが人気。一気に香りのトレンドを変化させている。彼らは、住んでいる地域で香水を購入するため、パリの中心ではなく、郊外にニッチフレグランスの販売店が増えている。

WWD:日本市場における戦略は?

ガブリエル:エレガンスを軸に他にはない香りを提案し続ける。また、新しい世代に向けた香水も提案したい。新しい調香師と新作を製作中で、年末には、新しい香水を発売する予定だ。

パワフルでメタリックな香りがトレンド

WWD:現在のフレグランス市場のトレンドをどのように分析するか?

ガブリエル:5〜6年前までは、中東、アジア、ヨーロッパなど地域性で好まれる香りがはっきりしていた。今もある程度はあるが、それが薄くなってきている。今のトレンドは、即効性のあるパワフルな香りで、持続性があること。シトラス、ウッドなどさまざまな香りに独特なメタリックな香りが含まれている。

WWD:「チェリガン パリ」というフレグランスブランドを復活させた理由は?

ガブリエル:1920~30年代の最初のニッチフレグランスのブランドで、誰もが知っている香水を作り出した。大胆で伝統にとらわれず、当時のVIPクライアントを多く持っていた。20年代の狂乱の時代を象徴するブランド。自由や楽しさを求める今の時代に共通するものがある。

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