ファッション

伝統を刷新し続ける「トミー ヒルフィガー」  “若者”と“セレブリティー”を起点に40年目へ

創業者本人が現在もデザイナーを務める「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、2025年で40周年を迎える。常にニュースに事欠かず、今年2月にはニューヨーク・ファッション・ウイークにカムバックし、4月には「トミー ジーンズインターナショナル ゲームス(TOMMY JEANS INTERNATIONAL GAMES)」の復刻コレクションをリリース、K-POPグループのストレイキッズ(Stray Kids)と2度目のコラボを果たすなど、現在も精力的に活動し続けている。

WWDJAPAN(以下、WWD):「トミー ヒルフィガー表参道店」がリニューアルオープンしてから1年が経つ。手応えは。

トミー・ヒルフィガー=「トミー ヒルフィガー」デザイナー(以下、トミー):素晴らしい場所に店舗を構えられて、顧客に喜んでもらえているように感じる。コロナ禍の人々は外出自粛を余儀なくされていたから、最高のタイミングで店舗をリニューアルできた。ショッピングは多くの人にとって“気晴らし”。実店舗でリアルな購買体験を楽しんでもらいたい。現在、D2Cやライブコマースが台頭しているが、店舗が顧客に刺激的な体験を提供するものである限り、なくなることはないだろう。

WWD:来年で創業40周年だが、息の長いブランドになるために必要なことは。

トミー:常に市場から求められ続ける存在を目指すことだ。通常、ブランドの刷新には何十年とかかり、決して1日で達成できるものではない。だからこそ、全ての物事を適切に進める必要がある。

「トミー ヒルフィガー」の顧客の年齢層はとても幅広いが、中でも若い消費者は、ブランドの勢いを加速させてくれる存在。彼らはファッションやアート、音楽、エンターテインメント、スポーツの世界で起きていることに敏感。「トミー ヒルフィガー」はこれまで、数多くのセレブリティーとコラボしてきた。我々もカルチャーの一員だからこそ、コラボ相手には単なる有名人ではなく、その時々のカルチャーにおける重要人物を選ばなければいけない。

若者のニーズを視野に
MDバランスで応える

WWD:「トミー ヒルフィガー」が考える現代の若者の特徴は。

トミー:3つある。サステナビリティーに関心があり、テクノロジーが搭載された生地を好み、シルエットやディテール、色にこだわることだ。今日の顧客は妥協しない。ブランドは、彼らのニーズを意識できるかどうかにかかっている。

WWD:現代の若者は、ブランドの歴史に裏打ちされた“らしさ”に魅力を感じる傾向がある。ブランドの伝統と新鮮さを同時に提案する秘訣は何か。

トミー:「トミー ヒルフィガー」は、伝統的なアメリカンプレッピースタイルを打ち出すブランドで、それは今後も変わらない。その上で、MDのバランスが全ての鍵を握る。あまりにも前衛的なスタイルを発表したら、それについていけない顧客も出てくるし、逆に変わり映えのないスタイルばかりを発表していたら、それに飽きる顧客も出てきてしまう。

バランスが重要だ。我々は最近では、1996年の「トミージーンズ ゲームコレクション」の復刻や、スプリング・コレクション、2024-25年秋冬コレクションの発表の中で、メンズ、ウィメンズ、キッズラインのみならず、シューズやアクセサリーも充実させている。同時に、定番アイテムをそろえた「エッセンシャルズ」ラインに力を入れている。同ラインは、「トミー ヒルフィガー」のビジネスを前進させる上で基盤となる存在だと考える。

セレブリティーとの関係性
“尊重し合える”パートナーシップ

WWD:先述のセレブリティーとのコラボについて聞きたい。世界にはたくさんのセレブリティーがいるが、「トミーヒルフィガー」がコラボ相手を選ぶ基準は。

トミー:ブランドを愛してくれているかだ。「トミー ヒルフィガー」を大切に思ってくれない人に対して、ブランドの顔を務めてもらうためだけに報酬は払いたくはない。もちろん、我々もセレブリティーの才能を“当たり前のもの”として消費すべきではないし、人として彼らを好きになる必要がある。幸運なことに、「トミー ヒルフィガー」はその条件を満たしたセレブリティーと仕事ができている。

WWD:コミュニティーが細分化する現代において、新たな才能を探し当てることは必ずしも容易ではない。

トミー:「トミー ヒルフィガー」は、その時々の主流な価値観を察知するのに長けている。これまで、「音楽の世界やハリウッドでは今、何が起きているか?」など、各界の最新トレンドにアンテナを張ってきた。例えば、ブランドのミューズである女優のゼンデイヤ(Zendaya)も出会った当初こそディズニースターの一人だったが、今や世界的なファッションアイコンになっている。ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)も、ランウエイに登場し始めた頃は無名だったが、今では最も有名なモデルの一人だ。

スポーツ界についても同じで、F1とファッションは密接な関係性を築いて久しい。その中でも「トミー ヒルフィガー」は、F1のスポンサーを30年前から務めてきたし、レーシングドライバーのルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)とも10年以上にわたってコラボしている。

WWD:23年秋のキャンペーンに引き続き、24年春のキャンペーンでもK-popボーイズグループのストレイキッズ(StrayKids)を起用した。

トミー:彼らは生き生きとした楽しい人たちで、「トミー ヒルフィガー」のブランドスピリットと合致する。若い世代を中心に大人気だ。才能に溢れていて、ビジュアルも申し分ない。現在、K-popは大きな影響力を持っているが、我々はその中でも特に素晴らしい才能を備えたグループを選んだと思っている。

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