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「クラランス」のブランド責任者が語る、70年間継承する価値観と絶え間ない革新

PROFILE: カタリン・ベレニ/「クラランス」ブランドジェネラルマネージャー

カタリン・ベレニ/「クラランス」ブランドジェネラルマネージャー
PROFILE: ハンガリー生まれ。パリの国立高等装飾美術学校とフランスファッション学院を卒業し、アメリカでMBAを取得。2001年に「シュウ ウエムラ」ヨーロッパブランドマネージャーとしてキャリアをスタートする。07年にロレアルグループを退社し、韓国の化粧品研究者と共同で「エルボリアン」を設立。12年にロクシタングループが「エルボリアン」を買収。17年に「ロクシタン」と「エルボリアン」の最高クリエイティブオフィサーに就任。19年から現職 PHOTO : TAMEKI OSHIRO

クラランス(CLARINS)」は今年、ブランド誕生70周年を迎える。日本市場の調査と、日本チームとの連携をより強固にするためにこのほど、カタリン・ベレニ(Katalin Berenyl)=「クラランス」ブランド・ジェネラル・マネージャーが来日した。70周年の節目に、ベストセラー商品の一つである“フィックス メイクアップ”(50mL、4950円)をリニューアルし、7月5日に発売を控える。そのほか創設者ジャック・クルタン・クラランス(Jacques Courtin Clarins)の価値観を継承しながら、イノベーションにも積極的だ。ブランドを統括するベレニに、商品開発のこだわりや各国での商況を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):今回の来日の狙いは?

カタリン・ベレニ=「クラランス」ブランド・ジェネラル・マネージャー(以下、ベレニ):市場調査と、日本チームと直接コミュニケーションをとることが目的だ。世界でブランドを展開するにあたり、各国のチームや顧客の声を聞くことを重視する。それぞれの国で「クラランス」の商品がどのように息づいているかを知り、開発や戦略に生かしている。今回は、美容部員の声を聞くことで、顧客についての理解を深めるのも狙いの一つ。

WWD:日本事業をどう分析している?

ベレニ:日本はジャックが最も好きな国の一つで、消費者は厳密かつきめ細やかで要求のレベルが高い。ブランドが提唱する理念や哲学が受け入れやすい土壌がある。「クラランス」は、アジアでNo.3(同社調べ)のブランドに位置し、日本市場も成長しているものの満足のいく結果に達していない。

WWD:日本のチームに望むことは?

ベレニ:日本の顧客のニーズに応じた商品に絞って提案するべきだと考えている。商品の数を減らすわけではないが、より厳選した提案をしていきたい。また、「クラランス」は“植物を科学する”ブランドなので、厳選した商品の1つ1つにどのような成分が配合されており、それらが肌にどのような効果をもたらすのかをより明確に説明できるようになるべきだ。

創設者の価値観を70年間継承

WWD:「クラランス」70年の歴史をどのように振り返る?

ベレニ:「クラランス」は3代に渡る同族経営で、“女性の声に耳を傾け、最高の商品効果を提供する”という価値観を貫いてきた。商品開発とともに、商品の効果を最大限発揮するための使い方を開発し、美容部員に伝授してきた。創設者の価値観を70年間も忠実に守り、継承してきたブランドは世界でも数少ない。

WWD:世界でのビジネス展開は?

ベレニ:150カ国で販売しており、子会社が28社ある。売り上げは1位が中国で、アメリカとフランスが続く。中国とアメリカは大きなスキンケア市場で、高品質の商品を強く求めている。また、ヨーロッパでは絶対的な認知度を誇る。

WWD:コロナ前後の商況は?

ベレニ:2020〜21年のコロナ禍は業績が落ちたが、23年度はコロナ禍前の19年度と比べて20%成長した。想定より早く回復できたのは、ロイヤル顧客が多いことや商品の品質の高さが要因だと考えている。エイジングケア美容液“ダブル セーラム”や、唇をケアしながら色味を与える“リップコンフォートオイル”など、ほかのブランドに類似品がないような商品を多く生み出していることが好結果につながった。現在は、ボディーを含むスキンケアの売り上げが90%を占めているが、成長率はメイクアップの方が大きい。「クラランス」は女性の肌を守るためのメイクアップ商品を提案してきた。今後もスキンケア成分を配合したメイクアップ商品を積極的に開発し、販売していく。

WWD:好調な商品は?

ベレニ:どの国でも“ダブル セーラム”が最も売れている。今年、同商品のコンシューマーテストを初めて日本で行う予定だ。日本は要求のレベルが高く、フランスにとって重要な市場と捉えている。

ベストセラー“フィックス メイクアップ”を6年ぶりにリニューアル

WWD:08年に誕生した“フィックス メイクアップ”を6年ぶりにリニューアルする経緯は?

ベレニ:「クラランス」は絶え間ない革新を重視しており、常に商品の改良に取り組んでいる。今回の“フィックス メイクアップ”のリニューアルではスキンケア成分を97%配合。長時間保湿し、潤った艶のある肌をかなえる。また、自然由来成分の割合を94%まで高め、アルプスの自社農園で栽培したアルペンローズ エキスを配合した。乾燥などの外的ストレスから肌を守りながら、メイクを24時間フィックスするなど機能を向上した。

WWD:パッケージはどう変わった?

ベレニ:ボトルにリサイクルガラスを40%使用した。また、キャップに再生プラスチックを使用し、それ自体もリサイクルできるように改良した。「クラランス」は商品だけでなく、環境に配慮したパッケージの開発にもこだわっている。4月にリニューアルしたボディー用美容液“ボディ フィット アクティヴ”(200mL、1万450円)はチューブの47%に再生プラスチックを使用し、キャップも軽量化。それにより年間6トンのプラスチック使用量を削減した。

WWD:パッケージ開発の取り組みは?

ベレニ:25年までに、全ての商品が何らかの形でリサイクル可能あるいは詰め替え可能、再利用可能な状態を目指す。23年の段階で、商品の30%はパッケージに再生素材を使用している。25年には、使用率を50%に向上させる目標だ。

また現在、商品の70%はパッケージがリサイクル可能だ。リサイクル可能にするには単一素材でつくる必要があるが、メイクアップ商品はボトルやキャップ、スポイトなどさまざまなパーツがあるため単一素材にするのが難しい。25年までに、リサイクル可能な商品の割合を限りなく100%に近づける目標を掲げている。スキンケアは、25年までに全商品のパッケージをリサイクル可能にする予定だ。

WWD:リニューアル前の旧商品はどのように取り扱う?

ベレニ:全世界のアウトレットチェーンで販売する。あるいは、団体や協会などに寄付する。フランスの法律でも定められており、決して廃棄することはない。

得意とする植物研究を追求

WWD:改めて「クラランス」の強みは?

ベレニ:革新的であることと、商品の効果が高いことだ。世界トップ水準の研究所を擁し、23年には516種の植物を研究した。このうち商品化されたのはわずか10種だ。科学と本物思考を重視し、決して妥協しない商品開発に誇りを持っている。

WWD:今後のビジョンは?

ベレニ:「クラランス」はアルプスのオート・サヴォワ区域と、南仏ニーム近郊に自社農園を持つ。“農地から肌まで”という哲学を掲げており、30年までに、商品に必要な植物原料の3分の1を同農園から調達する目標だ。短期的な利益を追求するのではなく、長期的なビジョンに基づいて成長していきたい。

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