ゴールドウインは、7月に発表予定の新中期経営計画(2025年3月期〜29年3月期)の骨子となる、自社ブランド「ゴールドウイン(GOLDWIN)」の強化策を先立って公表した。「われわれが『ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)』(以下、TNF)でつちかった素材開発、縫製、デザインといったノウハウ全てを投下し、“プレミアムスポーツブランド”としてグローバルで地位を築く」と、渡辺貴生社長。10年後の33年3月期に、ブランドとしてグローバルで売上高500億円を目指す。現状、中国の店舗は北京の1店舗のみだが、「今後、中国の一級都市で出店を加速する」。詳細は5月14日の24年3月期決算発表時に公表する。
同社の基幹ブランドは「TNF」であり、「それは今後も変わらず、さらなる成長戦略を立てている」。ただし、「TNF」についてゴールドウインは、本国VFコーポレーションとの契約で日本と韓国の商標権を持つに限られている。企業としてさらなる成長を目指す中で、グローバルで売っていける自社ブランドの強化は以前から課題として掲げてきた。「ゴールドウイン」の中国展開については、先立って3月に発表していたように、現地企業の蘇州愿景零售(以下、SGAR)と4月に設立した合弁会社によって行う。出資比率はゴールドウイン65.0%、SGAR35.0%。「合弁会社を作る際は、株のマジョリティを持つことと商標権を保持することを最優先事項とした」と渡辺社長が説明するのは、「TNF」のそうした事情があるからだ。
北京店は原宿や丸の内を超える一番店
21年に出店した「ゴールドウイン」北京店は、日本の原宿や丸の内の旗艦店よりも既に売上規模が大きいという。また、国内店舗も「23年秋ごろから訪日客が増えており、改めてグローバル展開の可能性を感じている。ブランド全体として、現在前年比で1.5〜1.6倍で伸びている」ことを受け、中国での出店強化に踏み切る。「現状、中国市場は二極化が進んでいるが、機能性強化とローカライズ対応で、“プレミアムスポーツブランド”として中国大陸でシェアを獲得する」(発表資料から)。展開強化エリアは中国や日本、韓国が最優先で、次いで欧州、その次が北米だ。
「ゴールドウイン」が目指すポジションの“プレミアムスポーツブランド”とは、競合となる「アークテリクス(ARC’TERYX)」「オン(ON)」などからもよく耳にするワード。“プレミアムスポーツブランド”とは「(スパイバーとの取り組みなどで)サステナビリティやイノベーションを強く追求し、品質、機能、普遍的なファッション性の全てを備えたブランドのことを指す。従来のスポーツブランドは幅広い客層を狙ってきたが、より高感度な層に向けて開発していく」と渡辺社長。基本的に、パフォーマンス性を強く打ち出す「TNF」に対し、「ゴールドウイン」はパフォーマンス性と共にファッション性も強化し、「その結果、価格は『TNF』よりも高いレベルになる」。グローバル展開を見据えて、「ゴールドウイン」ブランドはここ3年ほどデザインや価格帯でリブランディングを進めてきており、それを継続。ブランド認知向上の一環として、これまでブランドロゴとは別だったゴールドウインの企業ロゴを、ブランドロゴにこのたび統一した。
「ゴールドウイン」の強化策に合わせ、会見では創業地の富山で進めている自然公園「ゴールドウイン プレイアースパーク(GOLDWIN PLAY EARTH PARK)」の進捗も公表した。従来、26年中に開業予定としてきたが、能登半島地震の影響で土木事業が逼迫していることなどを背景に、27年初夏の開業に後ろ倒しする。