「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」(以下、JWA)は、4月16~21日、ミラノで開催された「ミラノサローネ 2024(MILAN SALONE 2024)」(以下、サローネ)でミラノ市内のブティックで初のインスタレーションを行った。デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は、今まで「サローネ」にはクリエイティブ・ディレクションを務める「ロエベ(LOEWE)」を通して参加。今年は「ロエベ」に加え、自身の「JWA」2023年春夏メンズコレクションで協業したロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト兼ライターのパトリック・キャロル(Patrick Carroll)にフォーカスし、展示を行った。
残材ショップの大量の糸を平編み機でアートに
展示した37点のアートワークは、キャロルが残材ショップで集めた大量の糸から作り上げたもの。彼は、それらの糸からウールやシルク、カシミヤ、モヘアを選び出し、各素材の色をはじめ、質感や透明度を組み合わせたコンポジション作品を制作。自身のアトリエで1枚1枚手作業で作品を生み出し、テキスタイルの可能性を模索している。
言語、文化への眼差しと社会的側面の可視化
今回のインスタレーションで発表された作品には、“music(音楽)”“abnegation(自制)”“pity(同情)”“voices(声)”“permanence(永続性)”などの単語をはじめ、文学作品からの引用やキャロル自身の言葉が織り込まれていた。キャロルはこれら作品を通じて、日々の言葉をモジュラーのように組み合わせ、彼が持つ言語や文化への眼差しを表現すると同時に大量消費から派生する社会的側面を可視化している。
キャロルが使用するのは、電源を必要としない家庭用の平編み機。横にスライドさせて編み地を作る機械で、私が子どもの頃に、母親がニットを編むのに使用していたものと同じだ。キャロルは廃棄される糸からアート作品を編み出しているが、私の母も、編んだニットを解いて糸を再利用していたのを思い出す。合理性やスピード感が重要視される今、“手の温もり”が感じられるアートをはじめ、生活に関するさまざまなモノやコトへの関心はさらに高まっていくだろう。