ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスが5類に移行してちょうど1年。長かったコロナの時間でファッション市場はどう変わったのか。有力企業の5年前と現在の月次売上高を比較して考察してみた。
コロナ明け初の春商戦はアパレルチェーンで明暗が割れたが、既存店売上高、客数、客単価の2019年比を検証すれば、コロナ禍を経た5年間でマーケットがどう変わったか如実に見えてくる。AC(アフターコロナ)マーケットに対応できたチエーンとBC(ビフォーコロナ)マーケットの幻影を追ったチェーンの明暗を分けたのは何だったのだろうか。
春商戦の19年比を検証する
株式公開アパレルチェーンの春商戦(2〜4月)の既存店売上高、客数、客単価を19年比(3カ月の単純平均)で検証すると、明暗を分けた要素が見えてくる。
5年間で最も客単価が上昇したのがハニーズの125.7(年率4.7%)で、ユニクロが124.9(年率4.5%)、アダストリアが120.0(年率3.7%)、「しまむら」(注1.)が115.7(年率3.0%)、バロックジャパンが111.9(年率2.3%)と続く一方、ライトオンは105.2(年率1.0%)とわずかな上昇にとどまった。客数が増えたのは「しまむら」の103.5だけで、アダストリアは97.7と微減、ハニーズは93.3と1ケタ減だったが、ユニクロは86.9、バロックも82.2と2ケタ減で、ライトオンは60.4と激減している。結果、既存店売上高が増えたのは「しまむら」の120.2、ハニーズの117.1、アダストリアの113.0、ユニクロの108.7までで、バロックは92.3、ライトオンは63.3に沈んでいる。
客単価が上昇しても客数が増えて売上高が120.2と大きく伸びたのが「しまむら」、客単価上昇ほどには客数が減らず売上高が2ケタ増となったのがハニーズの117.1とアダストリアの113.0、客単価上昇相応に客数が減って売上高が伸び悩んだのがユニクロの108.7、客単価上昇以上に客数が減って売上高が落ちたのがバロックの92.3、客単価がほとんど上昇しなかったのに客数が激減して売上高が落ち込んだのがライトオンの63.3という構図だ。
「しまむら」が客数も売上高も伸びたのは、コロナ前の数年間の商品政策の逆行から一転して、コロナ下で「生活圏の衣のエッセンシャルストア」という原点に回帰して商品単価(注2.)も下げた(2.5%下降)22年2月期以降で、それが一巡した24年2月期は値上げ(7.1%上昇)も目立って99.2とわずかながら客数減に転じている。
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