「ディプティック(DIPTYQUE)」は5月8日(現地時間)、没入型の新店舗“メゾン ディプティック”をロンドンのニューボンドストリートにオープンする。同コンセプトの1号店は4月に、パリ右岸のデュフォ通りに構えている。2つの“メゾン ディプティック”は「ディプティック」最大の店舗として約370㎡以上の売り場面積を誇り、カルチャーイベントやワークショップ、カスタムサービスなどを通して体験価値を提供する。ブランドのプレミアム化戦略の一環だ。
ファビエンヌ・モーニー(Fabienne Mauny)最高経営責任者(CEO)は、「メゾン ディプティックのオープンは、ブランドを新たなステージに押し上げるだろう。新店舗は、『ディプティック』流のアール・ド・ヴィーヴル(暮らしの芸術)を祝福できる没入型の空間だ」と話す。「ますますデジタル化が進む世界で、『ディプティック』の店舗は標準化とはかけ離れた、特別で感覚的、親密な体験を提供することで際立っている。香水の創作から職人やアーティストとの協業まで、新店舗はわれわれのこだわりを物語っている」と続ける。
ローレンス・セミション(Laurence Semichon)=シニア・バイス・プレジデントは、「新店舗のコンセプトは、1961年にパリのサンジェルマン大通りにスタイリッシュな店をオープンしたブランドのルーツにつながる」と強調。インテリアデザイナーのクリスチャンヌ・モンタドル・ゴトロ(Christiane Montadre-Gautrot)と画家のデスモンド・ノックス・リット(Desmond Knox-Leet)、舞台演出家兼舞台装置デザイナーのイヴ・クエロン(Yves Coueslant)らによって立ち上げられた「ディプティック」は、キャンドルや香水のほか、幅広いインテリアテキスタイルやファブリック、装飾品、旅行先で調達した物などを販売していた。
セミション=シニア・バイス・プレジデントは、「われわれは小売業から始まった。創業者は店舗の2階に住んでいたので店と居住スペースは必然的に一体化しており、親密でパーソナル。彼らと店舗の境界線は常に曖昧だった。今回の新店舗では、このコンセプトを表現した。人々が気持ち良く時間を過ごし、さまざまな空間を歩き回り、多くの体験を得られる場所にしたい。そして、店を出る時にはインスピレーションを与えられていることを願う」と話す。
2年の歳月をかけて改装したパリの店舗は2階建てで、複数のエリアで構成する。ミーティングや展示会、アーティスティックな体験に特化した“エスパス・エフェメール”というエリアは、パリのアイコニックなコンセプト・ストア「コレット(COLETTE)」の創設者であるサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)がキュレーションを協力した。同エリアでは、パリ最古のコーヒー専門店カフェ ヴェルレ(CAFE VERLET)とのコラボレーション・コレクションを皮切りに、年に3〜4つのプロジェクトを紹介する。
コラボ第2弾は、南仏イエールに位置する現代美術アートセンターのヴィラ・ノアイユ(VILLA NOAILLES)との長期に渡るコラボレーションを祝福するイベントを開催する予定だ。セミション=シニア・バイス・プレジデントは、「昨年ヴィラ・ノアイユの100周年を記念して、ヴィラ・ノアイユと提携している10人のアーティストに巨大なキャンドルの装飾を依頼した。とても想像力に富んだクリエイティブな作品ができたので、パリでも展示したいと思った」と経緯を説明する。9月には彫刻家シリル・ロンスラン(Cyril Lancelin)の自然から着想を得た記念碑的な作品群を展示し、年末にはイギリス人デザイナーのルーシー・スパロウ(Lucy Sparrow)と協業したクリスマスマーケットを開催する予定だ。
ワークショップに特化したエリアでは、嗅覚特性やギフトラッピングなどについて学べるほか、子ども向けの特別なセッションも用意する。“ヘリテージ・ギャラリー”と名付けたエリアには、もう一つの展示スペースを設けた。同エリアでは「ディプティック」初期のボトルやキャンドル、創設者の私物や原画などを展示する。
そのほかに、職人による限定のデコレーション・コレクションを紹介するコーナーや、パリのフラワーアーティストであるステファン・シャペル(Stephane Chapelle)の作品を取り入れた“ル・ジャルダン・イマジネール”というエリアを設けた。同エリアはシャペル自身がキュレーションを担当し、季節によってセットやアレンジメントを変更する。
1階には大理石の暖炉やオーク材の棚、大きなアームチェア、豪華なウールのカーペットなどで飾った居心地の良い家のような空間が広がる。香水のライブラリーにはパーソナルフレグランスの全商品を並べ、アール・デコ調のバスルームにはバス&ボディー商品を展示する。また別のコーナーでは、ブランドのサステナビリティへのコミットメントを表現する。「ディプティック」は15種の香りの固形香水やキャンドル、家庭用または車用ディフューザーの詰め替えサービスを提供。フレグランスの使用済みボトルやキャンドルのガラス容器も回収し、リサイクルしている。ボトルの修理も実装予定だ。
さらに、200通り以上の組み合わせから選べるキャンドルのカスタマイズのほか、香水の専門家による1時間のパーソナル・コンサルティングなど多様なサービスを用意する。新コンセプトの店舗は、2029年までに幾つかの都市でオープン予定。セミション=シニア・バイス・プレジデントは、上海とニューヨークを次の候補地に挙げている。
「ディプティック」は、56カ国で1200の販売拠点を持つ。その中で、現在123ある標準的な独立型店舗を通じて小売拠点を拡大し続けるという。3月にロンドンのメリルボーン地区、4月にミラノで店舗をオープンし、夏の間にマドリード、9月にボストンなどでもオープン予定だ。6月にはインド市場に進出し、初の旗艦店をオープンする。
セミション=シニア・バイス・プレジデントは、特に新規顧客の獲得に関わる卸売りの重要性を強調し、小売のみの流通チャネルにとらわれるつもりはないという。同氏によると、日本市場も大きなポテンシャルがあり好調。親会社マンザニータ・キャピタル(MANZANITA CAPITAL)の2023年の売上高は前年比19%増の4億7200万ドル(約726億8800万円)だった。