PROFILE: ブノワ・デ・クラーク/ゼニス最高経営責任者
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンは、ベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)の三男でタグ・ホイヤーのCEOを務めていたフレデリック・アルノーを同社ウオッチ部門のCEOに任命した。フレデリックCEOは、新設の役職で「ウブロ」と「タグ・ホイヤー」そして「ゼニス」の3ブランドを統括する。ジュリアン・トルナーレ「ゼニス」CEOは、アルノーCEOの後任として「タグ・ホイヤー」のCEOに異動。後任には、オフィチーネ パネライの最高商務責任者(CCO)だったブノワ・デ・クラークが就いた。新CEOに話を聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):「パネライ」から「ゼニス」のトップに変わって、3カ月ほどが過ぎた。
ブノワ・デ・クラーク=ゼニス最高経営責任者(以下、クラークCEO):「ゼニス」のことは大体知っていると思っていたが、それ以上に深い歴史、豊富なヘリテージを持つ、「正真正銘」なブランドであることは理解しきれていなかった。これほどの歴史と遺産、そして信頼性を有しているブランドは、決して多くないだろう。同じ工場で160年間(創業は1865年、来年160周年を迎える)、時計を作り続けている。私の使命は、「ゼニス」はこれまでも健全で真っ当な会社だったが、それをより正しい方向に導くことだ。
WWD:「正しい方向」とは?
クラークCEO:「ゼニス」のアドバンテージは、歴史。そこに革新性を加えることに注力したい。ブランドの中では、40人以上のエンジニアが毎日、より良いものを作ろうと小さな時計における極小のパーツについて考え、改良を続けている。一方ブランドを取り巻くコミュニティーでは、「ゼニス」のことを私たち以上になんでも知っている愛好家と密接につながっている。彼らの意見を聞きながら、ブランドを発展させていきたい。特に日本には「ゼニス」通が多く、私も5月には来日して、日本の時計愛好家と交流する予定だ。
WWD:今回新作として発表したダイバーズも、愛好家ら顧客のリクエストを踏まえたもの?「ゼニス」からダイバーズ時計とは新鮮だ。
クラークCEO:私たちは長らく、ダイバーズではなかったものの防水時計を作ってきた。今回復刻した1969年の時計などが代表例だ。600m防水の時計は、堅牢性に優れ、当時ジャーナリストは「金庫」と呼んでいたという。そんな精神を継承したダイバーズ時計だ。新しい時計の防水性能も600m。600mは、1969フィート。1969年に発売した時計にオマージュをささげている。
WWD:多くの時計ブランドが若年層の獲得にまい進している。
クラークCEO:若い世代は、「本物に手を出してみたい」と「納得の価格で手に入れたい」という気持ちを持っている。その双方に応えることが重要だ。「本物」というニーズには、「ゼニス」がこれも69年に開発した世界初の自動巻きクロノグラフムーブメントの“エル・プリメロ”が圧倒的な武器になるだろう。誕生以来2400もの賞を獲得しているムーブメントだ。「納得の価格」については、彼らにとって「頑張れば買える」という価格帯を維持することが重要だ。私たちのメッセージは、「タイム・トゥ・リーチ・ユア・スター(最も高い、あなたの星を掴むために)」。「到達する楽しみ」を提供するブランドとしては、「到達できる」価格帯の商品を作り続けることが大事だと思っている。
WWD:CEOだった3年間で「タグ・ホイヤー」の売上高を1.5倍に伸ばした実績を踏まえ、フレデリックCEOが統括する3ブランドはこれまで以上の個性を帯びることになると思う。業界は、「ウブロ」は引き続き最先端の素材や機構に挑み続けるハイエンド時計を極め、一方の「タグ・ホイヤー」はエントリープライスの時計を充実させることで若年層やエントリー層にリーチするのではないか?と見ている。その中での「ゼニス」は、クラークCEOが話す通り、「正真正銘」なブランド。「ウブロ」と「タグ・ホイヤー」の間のプライスレンジで、「王道」の時計を作り続けることが使命なのでは?と考えているが、この見立ては正しい?
クラークCEO:正しいと思う。「王道」だから、私たちの時計は、愛好家からエントリーユーザーまでを引きつけている。今は、作った分だけ売れている。とてもありがたい状況だ。
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