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連載 小島健輔リポート

ワークマン挫折の必然 チェーンストアとしての未熟さ露呈【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。作業服店からカジュアルウエアへの事業シフトによって、急成長してきたワークマンが踊り場でもがいている。このほど発表した2024年3月期業績は2年連続の営業減益。出店攻勢によって増収は確保しているものの、既存店売上高は9年ぶりにマイナスに転じた。円安も追い討ちをかける。ワークマンの課題はどこにあるのか。どこよりも詳しく分析してみた。

アウトドアブームが沈静化して「ワークマンプラス」が勢いを失い、「#ワークマン女子」を前面に打ち出したカジュアル路線が顧客ともビジネスモデルともすれ違い、さまざまな効率が悪化して業績が傾き出しているワークマン。最新決算から挫折の構図をあぶり出し、再成長への策を探ってみた。

既存店の前年割れで成長が頓挫し2期連続の減益

ワークマンの24年3月期は15年3月期以来の既存店前年割れ(98.6%)で加盟店売上高が101.3%と伸び悩み、チェーン全店売上高も103.2%にとどまった。既存店売上高は「ワークマン」が98.2%、「ワークマンプラス」が96.6%、「#ワークマン女子」は88.9%と2ケタ割れだった。フランチャイズ本部たるワークマンの営業総収入も103.4%と16年3月期の102.4%以来の低い伸びで、全ての指標が当初計画を下回り、営業利益、経常利益、当期純利益とも96.0%と2期連続の減益となった。

既存店売上高は20年3月期の125.7%、21年3月期の114.2%から22年3月期は101.5%、既存店客数も20年3月期の119.8%、21年3月期の113.8%から22年3月期は101.0%と急減速し、24年3月期は既存店売上高98.6%、既存店客数96.0%とついに水面を割り込んだ。既存店の平均年商/1日平均客数も1億7123万円/167人と前期の1億7152万円/172人からわずかながら減少に転じ、15年3月期の9489万円/113人を底に上昇してきた勢いもストップしてしまった。平米当たりチェーン全店売上高も前期の59.2万円から58.3万円とわずかながら下降に転じ、18年3月期の33.5万円から年々上昇してきた販売効率も頭を打った。

19年3月期は全837店中の825店を占めた「ワークマン」は「ワークマンプラス」などへの転換で401店と半分以下に減少し、代わって19年3月期は12店だった「ワークマンプラス」が552店、21年3月期から立ち上げた「#ワークマン女子」は48店まで増えた。売上構成も22年3月期はまだ「ワークマン」が60.4%と過半を占めていたが、24年3月期では「ワークマンプロ」10店舗を含んで42.3%と過半を割り、「ワークマンプラス」「#ワークマン女子」が57.7%と主流に転じている。その「ワークマンプラス」の既存店前年比が96.6%、「#ワークマン女子」は同88.9%と落ち込んだのだから、一般客向けカジュアル路線による成長戦略は頓挫したと言わざるを得ない。

経営効率も商品財務も軒並み悪化

成長戦略の頓挫でワークマンの経営効率も軒並み悪化している。営業利益率は17.4%と前期から1.4ポイント低下し、22年3月期からは5.7ポイントも低下している。チェーン全店売上比でも13.2%と前期から2.0ポイント、22年3月期からは3.9ポイント低下している。ROE(自己資本純利益率)も13.3%と前期から2.0ポイント低下し、21年3月期からは7.0ポイントも低下している。ROA(総資産経常利益率)も同様で、16.7%と前期から2.2ポイント低下し、21年3月期からは7.5ポイントも低下している。以降はチェーン全店売上比で商品財務効率の推移を見た。

チェーン全店売上原価率は48.74%と前期から0.44ポイント抑制されたが、21年3月期からは5.06ポイントも上昇している。チェーン全店粗利益率は51.26%と計算できるが、開示されているチェーン全店粗利益率は35.8%と大きな乖離がある。その要因はワークマンを通さずメーカーが直接に加盟店に供給する商品の存在だと思われる。メーカー直接供給品はチェーン全店売上原価の20%前後を占めるが、計算で割り出すことができる。

加盟店売上高1609億2600万円の開示されている粗利益率36.0%から加盟店の売上原価は1029億9260万円と計算され、加盟店向け商品供給売上823億2400万円との差額206億6860万円(加盟店売上原価の20.1%)がメーカーから加盟店への直接供給額と推計される。ワークマンの売上原価854億2000万円にこの206億6860万円を加えた1060億8860万円がチェーン全体への供給原価と推計できるから、チェーン全店の粗利益はチェーン全店売上高1752億5000万円から1060億8860万円を差し引いた691億6140万円と推計できる。ならばチェーン全店の粗利益率は39.46%と計算できるが、開示されているチェーン全店粗利益率は35.8%だから3.66%が値引きロスになったと推計される。

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