資生堂は10月18日、同社が擁するプロフェッショナルブランドの「カリタ(CARITA)」と「デクレオール(DECLEOR)」を、フランスのロレアル社に売却するための独占的な交渉を開始したことを発表した。フランスの労働法に従い、対象事業会社における労使協議会への通知、意見照会の手続きを開始した。
両ブランドは、資生堂の国内外の理・美容室向け製品の製造・販売を行なう「プロフェッショナル事業」として、スパ・サロン市場に向け、主に日本やアジア、米国、欧州で展開されているブランドだが、近年の欧州の景況悪化などを受け、苦戦を強いられていたのも事実。資生堂は全社で「集中と選択」を経営課題として挙げていて、エステティック事業の縮小が検討されている中、ロレアル社から2億3000万ユーロ(約307億円)で提案があったという。ロレアル社にとっては、これまで手薄だったナチュラル・オーガニックカテゴリーのブランドを傘下に収められる上、得意のサロン流通で両ブランドの強みを発揮できるメリットがあるとみられる。これにより、資生堂のプロフェッショナル事業は、「ザ・ヘアケア」などのヘアケア事業に集中する構えだ。
「カリタ」は1945年、パリ初の女性ヘアアーティスト、ロージィ&マリア・カリタ姉妹が、フランス・パリのフォーブルサントノーレにオープンしたヘアサロン発祥のトータルビューティブランド。ヘア、フェイス、ボディのトータルな美しさの完成を求め、顧客一人ひとりに合わせた施術「オート ボーテ」(美のオートクチュール)が特徴だ。86年に資生堂の傘下に入り、2013年3月現在、世界56カ国で展開。国内では直営店の「ラ メゾン ド ボーテ カリタ 東京」や直営サロンの他、6店舗の百貨店にカウンターを構えている。今年3月からは一般のヘアサロンなどでの取り扱いも本格的にスタートした。
一方、「デクレオール」は1974年、美容家ソランジュ・デシムリーによって創設されたアロマスキンケアブランド。アロマセラピーやフィトセラピーなどを生かした独自のメソッドで肌、体、心のバランスを整え、健やかな美しさへと導くホリスティックなアプローチが特徴だ。2002年に資生堂が買収、現在までに80ヵ国で展開。国内では資生堂直営のサロンの他、2店舗の百貨店にカウンターを構える。また、全国のホテルや旅館のスパ、サロンなどで導入されていた。
両ブランド合わせた売り上げは、約1億ユーロ(約133億円)。今後は、譲渡金額を含む諸条件について、数ヵ月に渡り交渉が続けられる見通しだ。
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