ファッション
連載 エディターズレター:FROM OUR INDUSTRY 第112回

日本は世界一の「お買い物天国」 ほんの20年で、「内外価格差」の意味が真逆になった

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このお手紙は、「グッチ(GUCCI)」の2025年クルーズ・コレクションを終えたばかりのロンドンからお送りしています。今回は日曜の昼過ぎに羽田からロンドンに向かいましたが、羽田の免税エリアは凄まじい人、人、人でした。上の記事にある通り、円安の日本は今、世界一の「お買い物天国」。中でも免税の羽田空港は、インバウンドはもちろんローカルまで、ある意味、まさに世界で一番お手頃にラグジュアリー・ブランドの商品が買える場所でしょう。

ほんの(!?)20年前までは、同じ製品も「日本で買う方が高い」が当たり前でした。各ブランドは日本と国外、特に日本と本国の「内外価格差」の解消に努め、本国直轄の場合は約1.2倍程度に抑えようとしていた印象です。リラからユーロへの移行も加わり、内外価格差を1.2倍程度に抑えられないインポーターが過渡期を迎えたのは、この頃です。さらにファーフェッチ(FARFETCH)に代表される越境ECが当たり前となり、インポーターの差益で稼ぐビジネスモデルは完全に崩壊。倒産した会社がある一方、生き残っている会社は独自の目利き力と情報網をインポーターとしてのブランド選定力のみならず、自主編集のセレクトショップや日本独自の派生ラインの展開などに応用しています。コロネット(CORONET)や豊田貿易が代表例でしょう。

このように日本のインポーターに変革をもたらした「内外価格差」という言葉が、今では、もはや逆の意味に用いられています。となると、ここで単純な疑問が頭をよぎります。かつては内外価格差を1.2倍程度に抑えようと腐心していたのなら、今もまた、かつての真逆になった内外価格差を修正しようとはしないのでしょうか?ラグジュアリー・コングロマリットのジャパン社はおそらく、毎週どころか毎日、為替を鑑みて、同じ商品の各国での価格を比べているハズです。歪な構造だとわかっているのなら、なぜ解消しないのでしょうか?

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