中国コスメ「フローラシス(FLORASIS)」は9月1日、仏パリの百貨店サマリテーヌ(SAMARITANE)にヨーロッパ初のカウンターを開設する。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のセレクティブ・リテール部門に属するDFSとの提携によるもので、1年間はフランス国内で同店が独占販売する。カウンターはビューティフロアの中央に位置し、世界的なプレミアム・ビューティブランドの数々と隣接する。内モンゴルの地域文化に着想を得た“ノマディック・グラム”シリーズは、この機会にヨーロッパでデビューする。
米「WWD」が発行する「ビューティ インク(BEAUTY INC)」の推定によると、「フローラシス」の2023年売上高は前年比14.1%減の28億4000万人民元(約596億4000万円)だった。一方で、中国国外での売上高は同180%増と伸長しており、海外進出を加速する。世界展開と国際的な商品開発のために2000万人民元(約4億2000万円)以上を投資し、日本とアメリカ、ヨーロッパで事業を拡大している。大阪に配送センターを持ち、29年までに日本に約25店舗、アジアと北米、ヨーロッパに計25店舗ほどオープンする目標だ。中国では手頃な価格帯のブランドとして知られており、世界でも同様の価格戦略を目指す。
「フローラシス」とDFSの関係
ギャビー・チェン(Gabby Chen)=「フローラシス」グローバル展開担当プレジデントは、「DFSとのパートナーシップ、特にサマリテーヌでの販売は、ラグジュアリーでスタイリッシュな販路の獲得に貢献するだろう」と述べる。セーヌ川に面したポン・ヌフ通りに位置するサマリテーヌは、パリ市民と海外からの旅行客の両方にアピールできる場所だ。
一方アマエル・ブレイン(Amael Blain)=DFSビューティ部門シニア・バイス・プレジデントは、サマリテーヌの会員制ラウンジ、ラパルトマンでVIP顧客向けに「フローラシス」の歴史や商品、ブランドにインスピレーションを与えた中国文化を学ぶマスタークラスを開講する予定という。「DFSは、『フローラシス』の商品から洗練されたデザインまで、同ブランドが掲げる美を理解している。『フローラシス』も同様に、DFSがグローバルなネットワークを持つラグジュアリー・トラベル・リテールのリーダーであることを高く評価している。今後も中国コスメのトレンドを注視し、新しいブランドを発掘し、顧客のニーズに応えたい」と述べる。
日本は、「フローラシス」が最初に進出した国際市場だ。アマゾンで取り扱い、23年9月には伊勢丹新宿本店でポップアップを開いた。日本市場の売上高は前年比132%増と好調で、25年1月には銀座に出店する予定だ。チェン=プレジデントは、「日本の消費者は、『フローラシス』の商品開発の中核である伝統と革新を重視している。日本市場での知見は商品の処方だけでなく、信頼性や伝統、技術的進歩に焦点を当てたマーケティング戦略にも生かせるだろう」と話す。ブランドの認知度が十分に高まった後は、独立した店舗の展開も視野に入れているという。
「フローラシス」は、中国の伝統文化にインスパイアされた華美な商品とパッケージで知られる。同国の伝統的な美学と現代の化粧品の革新性を取り入れた“百鳥朝鳳 アイシャドウパレット”(6700円)が世界的なベストセラーだ。“百花同心錠 彫刻リップ”(5600円)も発色と成分の処方から、中国国内外で人気を博している。