ベネチア発フレグランス「ザ マーチャント オブ ヴェニス(THE MERCHANT OF VENICE)」(以下、TMOV)が日本に上陸した。同ブランドは、中世から、東洋やアフリカとの交易の中心地として栄えたベネチアの歴史と文化がイメージソース。ベネチアで120年以上にわたり香水を製造しているマヴィヴェ社が製造を手掛けており、日本では、ヤマノ アンド アソシエイツが輸入販売する。上陸を記念し5月に、マルコ・ヴィダル=マヴィヴェ・マネジング・ディレクターが来日。「TMOV」の紹介をはじめ、ベネチアと香水の歴史について語った。
ベネチアからヨーロッパに広まった香水や化粧品
ヴィダルディレクターは、イタリア香水の歴史を刻んできたファミリー企業の4代目。自社ブランドをはじめ、ファッションブランドなどの香水を90カ国以上で販売している。ヴィダル家は“ベネチアの調香師”として知られ、2013年に、ベネチア市民博物館財団と協業でモチェニーゴ宮殿に香水博物館を設立。約3000の香水コレクションをはじめ、香水やコスメの歴史に関する資料などが展示されている。ヴィダルディレクターは、「ベネチアがヨーロッパで初めて香水が開発された街だ」と話す。中世にコンスタンティノープルから香水や化粧品がベネチアに伝わり、貴族の間で広まり製造されるようになった。中世の香水は軟膏のようなもので、短期間しか香りが持続しなかったが、ベネチアの調香師はアルコールがエッセンシャルオイルの希釈および防腐剤として効果的であることを発見。そして、モダンな香水の原形ができて、香水は交易品の一つなったという。「ベネチアは、交易ルートの中心だったので原材料を入手することができた。16世紀には、香水や石鹸、化粧品を生産する中心地になり、17〜18世紀に調香技術はベネチアからフランスやドイツに広まった」。
ベネチアの歴史や文化を香りで体現
香水博物館の公式フレグランスである「TMOV」。ベネチアの交易ルートや商人たちが輸入したスパイス、樹脂、エッセンスなどからインスパイアされた6種類の“ムラーノ”コレクションは、ローズやサフラン、マンダリンなどを使用したエキゾチックなフレグランスで、美しいベネチアンガラスのボトル入り。世界でトップクラスのパフュームホールがあるロンドンの百貨店「ハロッズ(HARRODS)」と共同開発した“ムラーノ エクスクルーシヴ”は、ベネチアンブルーとゴールドのガラスボトルに収められている。メンズ向けのオードパルファム“ノビル オモ”は“高貴な男”という意味で、伝統的なベネチアのテキスタイルの柄や色をイメージさせるボトルが特徴だ。
ベネチアといえば、マルコ・ポーロ(Marco Polo)生誕の地。彼にオマージュを寄せたのが“ヴェネツィア&オリエント”シリーズ。ポーロがベネチアにもたらした東洋のお茶をベースにした香り2種類を陶器風のボトルで提案している。また、往年のオペラ歌手マリア・カラス(Maria Callas)生誕100周年を記念しカラスの財団から依頼されて製作したフレグランス“オードパルファム マリアカラス”を10月に発売する。フェニーチェ歌劇場の舞台に立つことが多くベネチアの滞在が長かったカラスの歌声を想起させるような神秘的な香りだ。
持続可能な香りで巡る世界各地
「TMOV」には、ジボダン社の“ソーシング・フォー・グッド”という原料産地のコミュニティーを支援するプログラムと提携した“アコルディ ディ プロフーモ”シリーズもある。ベルガモット イタリア、ネロリ モロッコ、チュベローザ インド、パチュリ インドネシアなど、古代の香水手稿(手書きの書類)に見られるような各国を象徴する原料を使用し、単品でも組み合わせても楽しめるフレグランスだ。このフレグランスの収益は、ジボダン社のプログラムに参加している生産者のコミュニティーの支援に使用される。