ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)の3枚目のアルバム「HIT ME HARD AND SOFT」が5月17日にリリースされた。これに先立ち米音楽誌「ローリングストーン(ROLLING STONE)」のインタビューでビリーは、「このアルバムは私自身のように感じる……キャラクターではないわ」と彼女にとって意味を持つ一枚であると語った。
今やビリーは音楽界だけでなく、ファッション界でも大きな影響を与えている存在であり、彼女が作り出す音楽と同じように、彼女の言葉やスタイルは常に注目を集めている。最新アルバムも背景にどのようなテーマがあり、どんなスタイルで楽曲を披露していくのか話題になる中、彼女のファッションの変遷を振り返るとともに、ファッションに対する彼女の考え方について迫った。
ビリーを象徴するオーバーサイズルックの意味
ビリーのファッションは、スケートカルチャーや00年代のゴススタイル、オーバーサイズのシルエットをミックスし、独自のスタイルを確立した究極のZ世代アイコンと評されている。超フェミニンなガウンやあからさまにセクシーなドレスをまとった、いわゆる“イットガール”という典型的なスタイルではなく、ファンキーなセットアップやダッドスニーカーでハリウッドのトップイベントにも参加してきた。
ビリーは19年の「ヴォーグ・オーストラリア(Vogue Australia)」で自身のファッションスタイルについて、「身体がどう見えるかをジャッジする機会もその口実も誰にも与えたくない。私は着るものを何枚も重ねてミステリアスでありたい。何を着ているかわからないわ」と語っていた。
シーンに合わせた自由なスタイルに。その背景とは
アーティストとしての功績が認められる中、映画祭やファッションイベントなどのビッグイベントへの出席が増えたビリー。「シャネル(CHANEL)」や「グッチ(GUCCI)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などのトップブランドも大胆に着こなす。イベントや楽曲を提供した作品のテーマやドレスコードに合わせたスタイルも披露し、新たな一面を見せるようになった。
共同ホストを務めた21年度「メットガラ(MET GALA)」では、「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」のペールピンクのチュールドレスに、13個の「カルティエ(CARTIER)」のジュエリーを合わせたロマンチックでグラマラスなスタイルで登場した。ボーイッシュなオーバーサイズスタイルが彼女のアイコニックであるという強い印象から一転、「マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)をほうふつさせる!」と大きな話題を集めた。また、映画「バービー(Barbie)」のために書き下ろした楽曲「What Was I Made For?」のミュージックビデオには、ポニーテールのブロンドヘアのバービールックで出演。年間最優秀楽曲賞を受賞した第66回グラミー賞授賞式では、1965年に限定発売されたプードル・パレードのバービーにインスパイアされた衣装を身にまとい、パフォーマンスした姿は記憶に新しい。
そんな中、彼女のスタイルの変化を批評するアンチに対し、自身のSNSにこうメッセージを発信した。それは23年度の「メットガラ」で「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」による胸元や肩を露にしたオールブラックのカスタムドレスを着用した後のこと。黒いレースやビジューのレイヤードが美しいコルセット付きガウンに、ハイヒールのプラットフォームシューズを合わせ、レッドカーペットに登場。そして「キャリアをスタートした5年間は、男の子っぽいとか、女性のように振る舞えばもっとセクシーになれるとかって言われ続けて、あなたたち愚かな人たちに破壊されるような時間を費やしてきた。そして今となれば、私が少しでもフェミニンなものや体にフィットするものを着るのに十分心地よさを感じれば、『(ビリーは)変わった』『変わり者だ』って言われるようになって……私はどっちにもなれる。女性という存在価値を認めて」と投稿。世界のメディアが彼女の思いを報じた。
それ以来、ビリーは型にとらわれない彼女らしい自由な着こなしを披露。歌曲賞を受賞した第96回アカデミー賞授賞式では、メリージェーンと白ソックスを合わせた「シャネル」のプレッピースタイルでレッドカーペットに登場したかと思えば、バスケットボールの試合には「エス(ES)」のスケートシューズとチェック柄のオーバーサイズのセットアップで姿を現した。決して単調でない彼女のスタイルこそ、誰もが注目する理由だと証明している。