「AZファクトリー(AZ FACTORY)」が、コレクションの制作や販売などファッションブランドとしての活動を終了することが分かった。今後は「AZアカデミー:ビジネス・フォー・デザイナーズ(AZ ACADEMY: BUSINESS FOR DESIGNERS、以下AZアカデミー)」と題した大学院教育プログラムに移行し、引き続きデザイナー支援を行なっていく。同ブランドは、2019年に「ランバン(LANVIN)」を長年手掛けてきたことで知られる故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)が、「クロエ(CHLOE)」や「ダンヒル(DUNHILL)」「アライア(ALAIA)」を擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT、以下リシュモン)とのジョイントベンチャーとして設立。デビューコレクション発表からわずか3カ月後の21年4月にエルバスが死去し、それ以降は毎シーズン異なる独立系デザイナーとのコラボレーションやデザインチームによってブランドを継続してきた。生産・販売される最後のコレクションは、ルッツ・ヒュエル(Lutz Huelle)がデザインした24年プレ・フォールになる。
選抜した若手や独立系デザイナーを支援
「AZアカデミー」は、ミラノを拠点とするリシュモンの企業スクールであるクリエイティブ・アカデミー(Creative Academy)の傘下に入り、ローマにあるファッションスクールのアカデミア・コスチューム&モーダ(Accademia Costume & Moda)と提携。世界のファッションスクールを卒業したばかりのデザイナーや、すでにファッションやレザーグッズ、アクセサリーの分野で活躍している独立系デザイナーを対象に、現在公式サイトで応募を受け付けている(締め切りは7月15日)。9月には、業界の専門家からなる審査委員会が、初年度の奨学金対象デザイナーを10〜20人選出。25年1月にミラノで1年間のプログラムをスタートする予定だ。選抜デザイナーは参加費として2500ユーロ(約42万2500円)を支払う必要があるが、プログラムにかかる費用の大部分はリシュモンが支援する。
リシュモンのフィリップ・フォルトゥナート(Philippe Fortunato)=ファッション&アクセサリー メゾン最高経営責任者(CEO)は、「『AZアカデミー』は、独立系ファッションデザイナーたちがそれぞれのクリエイティブなビジョンをビジネスの成功へと変えることを支援するユニークな機会を提供する。このプログラムを通じて、リシュモンはアルベール・エルバスと共に『AZファクトリー』で始まったストーリーを継承し続け、独立したクリエイションを支援することに対するコミットメントを再び明確に示す」と続けた。
「AZアカデミー」のプログラム内容は?
「AZアカデミー」発足の背景にあるのは、現在のファッション業界における課題だ。公式サイトでは、「既存のシステムには、クリエイティブなアイデアを投資を呼び込めるようなブランドビジネスへと変えるために必要なツールやノウハウをデザイナーに提供する教育プログラムや制度が欠けている」と指摘。若手デザイナーがブランド確立のための適切なツールを習得することをサポートするために、教育とプロフェッショナルな経験を融合させることを目的に掲げる。
同プログラムで取り扱うトピックは、クリエイティビティー、イノベーション、サステナビリティ、生産、財務、法律、マーケティング、包括性など。参加デザイナーはアカデミックな学習に加え、専門家による特別授業や個別指導、そして訪問、体験、インターンシップを通じてサプライチェーンに深く入り込むことになる。また最終プロジェクトでは、新しいファッションビジネスの支援に関心がある潜在的な投資家のためにビジネス戦略、コレクション計画、生産・事業計画を練り、プレゼンテーションで発表する。